最近、林達劉事務所が原告の代理人として代理した発明特許侵害事件では、上海知的財産裁判所は、被告の某機電会社が原告のブラザー工業株式会社に経済損失及び合理的費用を合計100万人民元賠償する旨の判決を言い渡した。
原告であるブラザー工業株式会社は、国際的な知名度を持っている工業用ミシンメーカーであり、本件「ミシン」発明の特許権者である。原告は2011年9月、2013年6月、2015年8月に被告の販売店から侵害被疑品を3回購入した。また、被告は上海で開催された2015中国国際ミシン展覧会において侵害被疑品のパンフレットを配り、侵害被疑品の現物を出品した。原告は購入した製品を分解した結果、いずれも本件特許の権利範囲内であることが分かった。そこで、原告は、被告が特許権者の許諾無しに、生産経営のために侵害被疑品の製造、販売、販売の申し出を行ったことは、原告の特許への侵害となり、原告の利益を損害したとして裁判所に提訴し、侵害行為の差し止め、在庫の特許侵害製品及び半製品の廃棄、特許侵害製品製造用金型及び専用機器の廃棄、損害賠償及び合理的な費用の合計470万元の支払いを請求した。
被告である某機電会社は、侵害被疑品が本件特許の権利範囲外であり、原告が主張した賠償額は事実的、法律的根拠を欠き、合理的な費用も高すぎると反論した。
上海知財裁判所は審理した上、以下のとおり判断している。
原告は本件「ミシン」発明の特許権者であり、本件特許は現在存続中である。他者は特許権者の許諾を得ずに、生産経営を目的とするその特許製品の製造、使用、販売の申し出、販売、輸入を行ってはならない。さもなければ、特許侵害行為となり、それ相応の民事責任を負わなければならない。開廷審理にて比較した結果、侵害被疑品CSM-9820A-00、CSM-9820-00は原告特許の請求項1、2、4、6に記載の構成要件をすべて充足しており、請求項1、2、4、6の権利範囲に属する。原告が提出した侵害被疑品の現物によれば、型番CSM-9820A-00、CSM-9820-00の製品は、かかる構成が同一である。購入に関する公証資料は、上記2つの型番の製品に添付される取扱説明書がいずれも「CSM-9820コンピュータ鳩目穴かがりミシン取扱説明書」であることを示している。また、取扱説明書の仕様欄の記載によれば、CSM-9820-□におけるブランクは、型番00、01、02にそれぞれ対応する「無」、「長」、「短」の下糸切断装置を表している。被告が展覧会で配ったパンフレットにも、CSM-9820-00/01/02という3つの型番が含まれている。被告は、かかる構成について上記シリーズ製品の各型番が同一であることを認めていないが、反証を提出していない。よって、CSM-9820-00/01/02という3つの型番の製品、及び型番CSM-9820A、CSM-9820の製品が、かかる構成について同一であり、いずれも本件特許の権利範囲に属するとの原告の主張を認める。
原告は、被告の2014年7月から2017年1月までの侵害による不法所得に基づいて賠償額を算定すると主張しているが、上海知財裁判所は現時点の証拠では、本件特許侵害製品の営業利益率、会社全体の製品に対する利益貢献率は把握できないため、原告の主張どおりに売上高の比率及び経常利益率に基づいて侵害被疑品の不法所得を算定することができないと判断した。一方、侵害被疑品の販売記録等の証拠により、被告の侵害範囲が広く、販売数が多く、製品の利益が高いことは証明されている。また、製品の利益は、多くの技術、ブランド、マーケティングなどの様々な要素により影響されるものであるが、本件の賠償額を算定する際に、製品の利益に対する本件特許の貢献も考えなければならない。以上より、上海知財裁判所は最終的に法定賠償額の上限で合計100万元の賠償を命じた。
本件判決は一審の結果であり、まだ確定していない。
日時:2017-07-13
ソース:上海知財裁判所
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