ポイント:1つの請求項が証拠に対して実質的な相違点を有しており、かつ両者の解決しようとする課題も異なる場合、当該請求項はこの証拠に対して新規性を具備すると考えられる。
概要:特許権者はエレクトロニクス業界のトレンドをリードしている製造メーカーである。
2019年7月、請求人は、特許権者のある特許(以下、対象特許という)の一部の請求項が証拠1及び証拠2に対して新規性を具備しないとして無効審判請求を提起した。特許権者の依頼を受け、当方より本件の対応を代理させていただいた。当方は、対象特許の詳細を分析したうえ、文字自体の表現制限があるため、一部の請求項に対して文字通りにその意味を解読すると、請求人の主張が成立するように見えるが、本件特許は、証拠1及び証拠2と解決しようとする課題、発明の構成、メカニズムなどが完全に異なるため、請求人の一部の請求項の保護範囲への理解と主張が不合理だと判断した。当方は、意見陳述書及び口頭審理の際に、両者の解決しようとする課題、発明の構成及びメカニズムがそれぞれ異なっていると詳しく説明し、明細書の記載に基づき、本件特許の請求項の保護範囲を明らかにしながら、本件特許は証拠1及び証拠2とが実質的な相違点があるため、すべての請求項が新規性を有すると強調した。合議体は、当方の主張を認め、2020年1月21日に本件特許の特許権の有効を維持する審決を下した。