明細書の開示不十分--当所が代理したある発明特許に係る無効審判審決取消訴訟は一審で勝訴
近日、当所が代理したある発明特許に係る無効審判審決取消訴訟は一審で、明細書の開示不十分を理由として対象特許の全部無効に成功し、勝訴しました。
審決取消訴訟段階において、当所は明陽科技社の代理人として、「メンテナンスフリーすべり軸受」という特許権を無効化することに成功しました(
無効審決の詳細はこちらをご参照ください)。特許権者は当該審決を不服として、裁判所に審決取消訴訟を提起し、当所は第三者である明陽科技社の代理人として訴訟に参加しました。北京市知財裁判所は、2023年12月29日に一審判決を下し、本件特許の請求項1-33に係る発明の開示で、中国特許庁の審決を支持しました。つまり、請求項1-33が特許法第26条第3項の規定に合致しないと認定し、原告の訴訟請求を棄却する判決を下しました。
本件訴訟において、原告は無効審判における主張以外に、裁判所に新しい証拠を提出し、本件特許の優先日前に無水マレイン酸変性ETFEに関する具体的な方法を公開した唯一の技術文献であり、本件特許の中間層ポリマーの製造方法は当業者に知られていたと主張しました。
これに対して、当所は複数の証拠、そして代理人自身の研究経験から、無水マレイン酸変性ETFEは、モノマー共重合、連鎖移動、グラフト共重合などを含む複数の作成ルーティングがあり、また各作成ルーティングには複数の既知の方法が存在すると反論しました。異なる作成ルーティング、パラメータで得られる生成物の性能はそれぞれ異なっており、当業者は本件特許の無水マレイン酸変性ETFEの具体的な構造が分からず、そしてどのようにして製造されたのかも明らかではありません。原告が提供した証拠は、複数のルーティングのうちの一つ、すなわち、グラフト共重合しか公開していなく、本件特許がグラフト共重合を採用していることを示す証拠はありません。また、グラフト共重合には、既知の方法が多く存在し、原告が提出した証拠により、無水マレイン酸グラフト変性ETFEの具体的な方法を唯一公開した技術文献であることを証明することができないし、原告が必ずこの方法を採用することも証明できません。そのため、本件特許の無水マレイン酸グラフト変性ETFEが明細書に十分に開示されていません。
一審裁判所は審理を経て当方の主張を支持し、係争特許の中間層ポリマーが明確に確定されていないと認定しました。本件特許には当該中間層ポリマーを得る具体的な方法を明確に記載しておらず、当業者はその発明を実現できないため、明細書の開示が不十分であります。原告が提出した他の証拠も、本件特許の請求項が特許法第26条第3項の規定に合致していることを証明するにも十分ではありません。
本件判決に対して、原告は30日以内に上訴することができるため、当該一審判決はまだ発効していません。