弊所が代理した発明特許「変速機構の伝達メカニズム」に係る審決取消訴訟で勝利
ポイント:構成要件が複雑である先行技術の構造を簡潔化にさせる特許について、複数の相違点による効果を考慮する際に、各構成要件だけではなく、これらの構成要件をまとめて総合的に考えなければならない。
概要:変速機構を生産する日本メーカーは、自社の特許(以下、対象特許という)が侵害されていたとして権利侵害訴訟を提起したが、対象特許は逆に無効された。その後の無効審決取消訴訟において、一審裁判所は、無効審決には、各相違点の関連性が無視され、創造的な労働をせずに各証拠を組合せても対象特許にならないと認定したため、国家知識産権局の無効審決を取消す判決を下した。
本件に係わる自動車の変速機構の伝達メカニズムと部品構造は非常に複雑であり、請求項に記載の構成要件も数多くあり、それにその進歩性の判断に構造の簡潔化された発明にも及んだため、相違点を如何に認定するのか、そして構成要件を如何に対比するのかは、本件審理のポイントになる。一審裁判所は、当業者が証拠1のレバー力伝達機構を改良するには、スリーブの前進阻止問題を同時に考慮する必要があると判断し、無効審決が請求項1と証拠1の相違点を2つにし、それぞれを前後の順で考慮するのは妥当ではないと認定した。それに、当業者が、証拠1の構造を簡潔化させる動機付けがあるものの、部品を減らすとともに、簡潔化された部品がスリーブのさらなる前進を阻止することも同時に実現させるには、そのほかの構造を改良する必要があるので、ほかの証拠による示唆がない限り、簡潔化された構造が自明であるとは判断すべきではなく、無効審決を取消す判決を下した。現時点、第三人しか上訴していなかったため、当方といたしましては、第二審でも引き続き公平な判決結果を期待している。