概要
「予測モードを使用したビデオデコードデバイス」、「予測モードを使用したビデオデコード方法」を名称とした対象特許2件は、ビデオコーデック分野で非常に有名なHEVC Advance特許プールに含まれていた標準特許であり、世界的に有名なイタリアのSISVEL 社のAV1、VP9特許プールの標準特許でもあった。
弊所のお客様は中国及び米国において、上記特許2件の無効化にチャレンジしたく、弊所に無効審判請求を依頼した。お客様の依頼を受けた後、弊所は十分に準備した上で、無効審判を請求した結果、2021年9月30日に、進歩性欠如の無効理由を認めた上記特許2件の無効審決が出た。
【本件のポイント】
対象特許の発明の特徴点は2つあり、弊所は複数の先行文献を用いて無効理由を構築した。
特許権者は答弁書にて、弊所が提出した外国語文献の中国語訳にいて、不適切な翻訳が多くあったとして一々指摘した。弊所はその指摘を確認して、中国語表現の調整にすぎず、文献自体への理解に影響を及ぼさないものについては認めた。一方、その指摘の一つは、文献に記載の技術への理解に関するものであり、対象特許の特徴点の一つが開示されているか否かの認定に関わるため、弊所はその指摘を認めなかった。1回目の口頭審理において、この点について双方は互いに説得できなかった結果、合議体は第三者の翻訳会社に再翻訳を依頼した。第三者の翻訳会社による翻訳文は、上記争われた点について、弊所の理解を認め、弊所が最初に提出したものと同じ翻訳を採用した。
もう一つの特徴点について、その構成自体は先行文献に完全には開示されていないが、弊所はこの特徴点に関係する発明の目的及び動機づけの観点から詳細に論述し、対象特許の明細書に記載の手段と先行文献に開示された手段との対比分析を通じて、先行技術から明確な動機づけがあると説得力をもって説明した。
その結果、中国特許庁は進歩性に関する無効理由を認め、上記特許2件のクレームをすべて無効とする審決を発行した。