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部分意匠を第1国出願とする意匠出願に関する中国での取り扱いについて


 
北京林達劉知識産権代理事務所
中国弁理士 王 雪
 
中国は部分意匠制度を有しませんので、この点において日本や、米国、及び欧州などの意匠制度と異なっています。部分意匠を第1国出願とする意匠出願について、中国でどのように優先権を主張するのか、又はどのように最大限度の権利範囲を取得できるのかということは、出願人や代理人が最も関心が寄せている問題であり、悩まされている課題でもあります。この点について、筆者はここで私見を述べますので、読者の皆様の優れた意見を引き出すために少しでもお役に立てば幸いです。

第1国出願における部分意匠の図面又は写真について、どのように修正すれば中国において意匠出願に用いられ、優先権を主張でき、かつ予想可能な合理的な権利範囲を取得できるのかという問題のポイントは、意匠の同一主題の認定にあります。中国の特許審査基準には、意匠の同一主題の認定について、次のような規定があります。

意匠の同一主題の認定は、中国での後の出願に係る意匠とその第1国出願に表された内容に基づいて行われるべきです。同一主題に該当する意匠は同時に以下の2つの要件を満たさなければなりません。

(1) 同一の物品の意匠に該当する。

(2) 中国での後の出願に係る意匠は、その第1国出願に明確に表されていなければならない。

中国での後の出願に係る意匠とその第1国出願における図面や写真とが完全に一致してなくても、後の出願書類に簡単な説明があるのに対して先願の書類には関連する簡単な説明がなくても、両者の出願書類から、後の出願に係る意匠が第1国出願に明確に表されていれば、中国での後の出願に係る意匠とその第1国出願に係る意匠の主題が同一であると認定されることになり、優先権を主張することができます。

以下、具体的な事例を挙げながら説明いたします。

事例1

図1に示すように、第1国出願が取っ手に関する部分意匠であり、破線でたんすが示されています。この第1国出願の優先権を主張して中国で意匠出願を行う際に、破線を実線に変更して、たんすに関する意匠出願を行うことが考えられます。また、たんすを削除して取っ手のみを残し、取っ手に関する意匠出願を行うことも考えられます。このように修正した2つの意匠は、いずれも第1国出願に明確に表されていますので、いずれも上記第1国出願の優先権を主張することができます。また、破線を実線に変更したたんすに関する意匠出願に比べて、破線を削除した取っ手に関する意匠出願のほうは権利範囲がより広くなります。


 
事例2

図2に示すように、中国における後の出願においては、先の第1国出願において破線で表された2つの円孔、及び破線部分と実線部分の境界線が削除され、残った破線部分が実線に変更されています。


 
現在、方式審査の審査官も図2に示すような修正を認めています。図2に示す修正について、方式審査の審査官は、後の出願における修正後の意匠の形状は、第1国出願の意匠に明確に示されているので、後の出願は第1国出願の優先権を主張することができると考えています。また、後の出願が出願時に提出した図面と第1国出願の図面と同一である場合、その後の補正手続きにおいて図2に示すように補正することも認められ、このような補正は新規事項の追加に該当すると指摘されることもありません。ただし、無効審判手続きにおいて、このようなケースはまだないのが現状です。

このように、部分意匠である第1国出願の優先権を主張して中国で意匠出願を行う際に、(1)すべての破線を実線に変更して物品全体について意匠出願を行う(2)実線で示された部分自体も意匠として出願可能な物品である場合、すべての破線を削除する(3)破線で示された部分について限られている修正を行うという3つの方法が考えられます。修正後の意匠は単一性の要件を満たす場合、同一の出願において2件以上の意匠を保護するように申請することもできます。これは、部分意匠である第1国出願の優先権を主張して中国で意匠出願を行う出願人にとって非常に有利であると思います。

以上は、部分意匠である第1国出願の優先権を主張する際に、中国でどのように意匠出願を行うべきかについて私なりの考えを述べましたが、ご参考にしていただけたら幸いです。読者の皆様と一緒に更なる検討ができることを期待しています。
(2011)

ホットリンク:北京魏啓学法律事務所
©2008-2025 By Linda Liu & Partners, All Rights Reserved.
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