最高裁判所による電子商取引プラットフォームに係る知的財産権民事事件の 審理に関する指導意見2020.10
法発〔2020〕32号
最高裁判所は『電子商取引プラットフォームに係る知的財産権民事事件の審理に関する指導意見』を印刷し、公布する通知
各省、自治区、直轄市高等裁判所、解放軍軍事裁判所、新疆ウイグル自治区高等裁判所生産建設兵団分所:
『電子商取引プラットフォームに係る知的財産権民事事件の審理に関する指導意見』を印刷し、配布する。慎重に徹底的に実行してください。
最高裁判所
2020年9月10日
最高裁判所電子商取引プラットフォームに係る知的財産権民事事件の審理に関する指導意見
電子商取引プラットフォームに係る知的財産権民事事件を公正に審理し、法に従い電子商取引分野の各方主体の合法的利益を保護し、電子商取引プラットフォームの経営活動が規範的、秩序よく、健康的に発展することを促進し、知的財産権裁判の実態に結びつき、本指導意見を制定する。
1、裁判所は電子商取引プラットフォームに係る知的財産権紛争事件を審理する際、知的財産権を厳格に保護する原則を堅持しなければならず、法に基づいて電子商取引プラットフォームを通してニセモノ、海賊版などの侵害商品又はサービスを提供する行為を懲罰し、当事者を誠実信用原則に従い、法により正当に権利を行使するように積極的に導き、且つ適切に知的財産権権利者、電子商取引プラットフォーム経営者、プラットフォーム内経営者などの各方当事者の間の関係を処理する。
2、裁判所は電子商取引プラットフォームに係る知的財産権紛争事件を審理する際、『中華人民共和国電子商取引法』(以下、「電子商取引法」という)の第9条の規定に従い、関連当事者は電子商取引プラットフォーム経営者又はプラットフォーム内経営者に属するか否かを認定しなければならない。
裁判所は、電子商取引プラットフォーム経営者の行為は、自営業務の展開に属すか否かを判断する際、以下の要素を考慮できる。商品販売ページに表記された「自営」情報、商品実物に表記された販売主体の情報、インボイス等の取引書類に表記された販売主体の情報など。
3、電子商取引プラットフォーム経営者はプラットフォーム内経営者が知的財産権を侵害していることを知ったか又は知るべきであった場合、権利の性質、権利侵害の具体的な状況と技術条件、及び権利侵害に該当する初歩的な証拠、サービスの類型に基づき、即時に必要な措置を講じなければならない。講じた必要な措置は、合理的かつ慎重な原則に従わなければならず、リンク削除、遮蔽、切断などの撤去措置を含むが、この限りではない。プラットフォーム内経営者は、繰り返し、故意的に知的財産権を侵害する場合、電子商取引プラットフォーム経営者は取引やサービス終了等の措置を講じる権利がある。
4、電子商取引法の第41条、第42条、第43条の規定によれば、電子商取引プラットフォーム経営者は知的財産権の類型、商品又はサービスの特徴などに基づき、プラットフォーム内の通知及び声明メカニズムの具体的な執行措置を制定することができる。しかし、関連措置は当事者が法により権利を保護する行為に対して、不合理的な条件又は障害を設置してはならない。
5、知的財産権権利者は電子商取引法の第42条の規定によれば、電子商取引プラットフォームに発送する通知は、通常以下のものを含む。知的財産権の権利証明及び権利者の真実の身分情報、正確に確定できる被疑侵害商品又はサービスの情報、権利侵害に該当する初歩的な証拠、通知の真実性を保証する書面など。通知は書面による形を取らなければならない。
通知は特許権に及ぶ場合、電子商取引プラットフォーム経営者は知的財産権権利者に構成要件又は創作のポイントに係る対比の説明、実用新案又は意匠権評価報告書などの書類の提供を要求できる。
6、裁判所は通知者が電子商取引法の第42条第3項に規定されている「悪意」の有無を認定する際、以下の要素を考慮できる。偽造、変更された権利証明を提出したこと、虚偽の権利侵害対比の鑑定意見、専門家意見を提出したこと、権利の状態が不安定であること明知しながら通知を発送したこと、通知にミスがあることを明知したものの、即時に取り下げしないまた改正しないこと、間違った通知を繰り返して提出したことなど。
電子商取引プラットフォーム経営者、プラットフォーム内経営者は、間違った通知、悪意によって発送された間違った通知がその損害を与えたとして裁判所に訴訟を提起した場合、電子商取引プラットフォームに係る知的財産権紛争事件と併合して審理することができる。
7、プラットフォーム内経営者は電子商取引法の第43条の規定に従い、電子商取引プラットフォーム経営者に提出する侵害行為が存在しない声明が、通常以下のものを含む。プラットフォーム内経営者の真実の身分情報、正確に確定できる、必要な措置の解除を要求する商品又はサービスの情報、権利帰属証明、授権証明など侵害行為が存在しない初歩的な証拠、声明の真実性を保証する書面など。声明は書面による形を取らなければならない。
声明は特許権に及ぶ場合、電子商取引プラットフォーム経営者はプラットフォーム内経営者に構成要件又は創作のポイントに係る対比の説明などの書類の提供を要求できる。
8、裁判所はプラットフォーム内経営者による声明が悪意を有するか否かを認定する際、以下の要素を考慮できる。偽造又は無効の権利証明、授権証明を提供したこと、声明には虚偽の情報を含むこと又は明らかに誤解を招くこと、通知には権利侵害を認定した発効の判決又は行政処理決定が添付されたものの、声明を発送したこと、声明に間違えた内容があったと明知しながら、即時に取り下げしないまた改正しないことなど。
9、状況が緊急であり、電子商取引プラットフォーム経営者は即時に商品撤去などの措置を取らなければ、その合法的利益に補填できない損害を与える場合、知的財産権権利者は『中華人民共和国民事訴訟法』第100条、第101条の規定に基づき、裁判所に保全措置を申請できる。
状況が緊急であり、電子商取引プラットフォーム経営者は即時に商品リンクを回復しなければ、通知者は即時に通知を取下げ又は通知の発送などの行為を停止しなければ、その合法的利益に補填できない損害を与える場合、プラットフォーム内経営者は前項でいう法律規定に基づき、裁判所に保全措置を申請できる。
知的財産権権利者、プラットフォーム内経営者の申請は法律の規定に合う場合、裁判所は法に従い、支持すべきである。
10、裁判所は電子商取引プラットフォーム経営者が合理的な措置を講じたか否かを判断する場合、以下の要素を考慮できる。権利侵害に該当する初歩的な証拠、権利侵害成立の可能性、権利侵害行為の影響範囲、悪意の権利侵害、権利侵害の繰り返しが存在しているかを含む権利侵害の具体的な情状、損害拡大を防止する有効性、プラットフォーム内経営者の利益に対する可能な影響、電子商取引プラットフォームのサービス類型と技術条件など。
プラットフォーム内経営者は、通知に係る特許権が既に国家知識産権局に無効宣告されたことを証拠にて証明でき、電子商取引プラットフォーム経営者はこれに基づき必要な措置を見合わせた場合、知的財産権権利者は、電子商取引プラットフォーム経営者が即時に必要な措置を講じなかったことに対する認定を請求した場合、裁判所はこれを支持しない。
11、電子商取引プラットフォーム経営者は以下のいずれかの状況がある場合、裁判所は権利行為の存在を「知るべきであった」と認定することができる。
(1)知的財産権保護規則の制定、プラットフォーム内経営者の経営資格の審査などの法定義務を履行しなかったこと、
(2)プラットフォーム内店舗の類型は「旗艦店」、「ブランド店」などの文字と表記された経営者の権利証明を審査しなかったこと、
(3)「高倣(類似度高いニセモノ)」「偽物」などの文字を含む侵害商品のリンク、苦情申立後に再開された侵害商品のリンクに対して、有効的な技術手段を講じて、濾過、遮断しなかったこと、
(4)その他合理的審査と注意義務を履行しなかった状況。