拒絶査定不服審判事件における商標同一・類似拒絶事由に関する対策の分析
中国商標弁理士 肖 暉
北京林達劉知識産権代理事務所
I. はじめに
長年にわたって「世界の工場」、「世界の重要な市場」の名声を博してきた中国は、商標出願の件数が20年連続で世界一を保持している。近年、悪質な商標登録出願に対して中国国家知識産権局による取り締まりが強化されており、新型コロナウイルスや世界的な地政学的衝突などにより経済不況が継続する中、一部の企業は新市場への参入や新製品の開発に確信を持てなくなり、勢いよく急増していた中国の商標出願件数も2021年のピーク時の945万件から700万件に減少した。一方、この状況にありながらも、中国の商標出願件数及び登録総数は依然として世界一の座を確保している。国家知識産権局(以下、「国知局」という)が2024 年 6 月 18 日に公開した「知的財産権統計ニュースレター」(2024年第 8 号)によれば、2024 年 5 月現在、中国の有効な商標登録件数は4,780.5万件に達している。これほど膨大な商標の既存量を背景に、新規に商標を権利化させることはますます困難になると感じられている。「国家知識産権局の2022年年次報告書」で公開されたデータによると、2022年に審決した商標拒絶査定不服審判事件のうち、商標登録出願が全部拒絶された事件は65.8%を占め、部分的に拒絶された事件は10.9 %で、初歩査定が許可されたのは僅か23.3%である。中国商標の権利化が難しい現状も上記データによって裏づけられた。
拒絶査定不服審判事件は勝算率が20~30%に過ぎないとの現状にはあるが、不服審判を請求しないと当該商標が無効になり、一旦、その指定商品に使用したら権利侵害が発生する恐れがある。したがって、当該商標の使用を既に始め、商標変更を好ましくない企業にとっては、法定の救済権利である拒絶査定不服審判を積極的に利用して、不服審判手続きにおいて積極的に主張と挙証を行うことによって拒絶理由を解消させることが望ましい。では、拒絶査定又は部分的拒絶査定を受けたとき、不服審判ではどのように反論すればよいでしょうか。ここでは、筆者自身の実務経験に基づいて、実例を踏まえながら、商標同一・類似という拒絶理由が発生した際に、不服審判事件において取り得る有効的な対応策を分析したい。
II. 拒絶査定不服審判事件における商標同一・類似拒絶事由に関する対策
周知の通り、拒絶又は部分的拒絶通知書における拒絶理由は、主に以下のいくつかが挙げられる。
本稿は、「先行商標との同一又は類似」で拒絶された場合の有効的な対策について分析を進めたい。
1. 拒絶査定不服審判において商標自体の非類似を争う
周知のように、商標類似については、国知局の判断基準はますます厳しくなっている。拒絶査定不服審判事件において、出願商標の独創性、引用商標と全体的外観、称呼、観念上の相違を強調するだけ、つまり商標自体は類似しないと主張するだけでは、勝算が高くない。しかし、実務から見れば、以下のような状況では成功する可能性がある。したがって、拒絶された商標が以下の状況に該当する場合には、積極的に不服審判を請求することができると筆者は考えている。
(1)引用商標と類似する文字又は図形が商標の顕著性の弱い部分に該当する場合
上表に示されているように、「冰糖房源及図」事例1 では、ハウスの図形は36類の「不動産の貸与」及び「商品物件不動産の販売」等の役務においては明らかに顕著性が弱い図形に該当する。「浄JOHKASOU」事例2 では、文字「浄」は、第11類の「汚水浄化槽」等の商品において顕著性の弱い漢字に該当する。したがって、不服審判において、請求人は文字又は図形が常用の図形又は文字に該当し、関連指定商品又は役務において顕著性が弱くて、一社で独占されるべきではないと主張したら、一定の効果がある。
また、例えば「bibilee Studio」事例3 では、出願商標における「Studio」文字はサイズが小さく、顕著性が弱い「スタジオ」を意味するものであり、出願商標の識別部分である「bibilee」と組み合わせた場合、引用商標と区別可能な観念、称呼が形成される。したがって、商標自体は類似しないという主張が審査官に認められた。
(2)出願商標と引用商標が共に他の識別要素を有する結合商標である場合
上表に示す「EASTZHI 及び図」事例4 及び「正太清及び図」事例5 では、結合商標の図形部分はある程度の類似性を持っているが、他の英文や漢字と組み合わせた場合、かつ引用商標にも他の区別要素がある場合には、商標自体は類似しないという主張が審査官に認められる可能性がある。
上記の観点を検証するために、次の「S図形」事例6 及び「Smash 及び図」事例 7 を見てみましょう。
上表の事例に示すように、出願人は、図形のみからなる一回目の出願が拒絶不服審判でも拒絶維持と判定された後、同じ図形に識別性の高い英文「Smash」を追加して再出願した。再び拒絶査定を受けた後、拒絶不服審判を請求したが、今回、出願人は、出願商標と引用商標は、それぞれにある「Smash」や「惠立洁」で区別されるため、商標自身は類似しないと主張した。結果としては、両商標が文字の構成、称呼、観念上に区別が明らかである主張が審査官に認められ、当該商標が最終的に権利を取得した。
纏めると、商標における顕著性の弱い文字又は図形が拒絶理由とされた場合、または出願商標と引用商標にそれぞれ他の区別性のある要素が存在する場合には、拒絶査定不服審判において、商標自身の相違だけを主張すると、一定の成功可能性があり、積極的に不服審判を請求することが考えられる。
2. 不服審判におけるコンセント(共存同意書)の提出
筆者はデータベース「Mozlen」を利用して「コンセント」をキーワードに検索し、以下の参考データを入手した。次に明確に示したように、コンセントの提出件数は2021 年の ピーク時の2,795 件から急減し、2023 年になると件数が 1,217 件になった。減少の理由は、2021 年の第 4 半期から、コンセントに対する国知局の態度の急変に関連していると考えられる。それまでは、不服審判事件においてコンセントが提出されば基本的に認められていたが、今、消費者の利益の保護が重要な位置づけに置かれるようになり、審査が厳しくされてきた。現状では、同一または類似の商品・役務上での併存が混同を生じさせるおそれがあると審査官が判断したら、コンセントが提出しても基本的には認めない。では、現状においても、コンセントは不服審判事件において提出する必要があるのか、まだ一定の役割を果たすことができるのか、事例を通して分析してみましょう。
拒絶不服審判事件における「コンセント」の提出状況
(1)コンセントが認められなかった事例
下表に示す「子犬図形」事例8 、「微博之夜」事例9 を含む4つの事例では、出願人が拒絶不服審判段階においてコンセントを提出したが、審査官は消費者の利益を保護することは「商標法」の立法目的の1つであり、当事者による私権の処分は前述の立法目的によって制約されるべきであると考えた。引用商標の権利者はコンセントを発行したが、出願商標と引用商標とは類似商標に該当するので、同一又は類似役務に併存したら、消費者に混同を生じさせる恐れがあることに理由に、審査官はかかる商標の登録出願を拒絶した。なお、「TSINGTAO PURE DRAFT 及び図」事例10 の出願人である「青島ビール公司」と引用商標権者である「山東新銀麦ビール有限公司」とは関連会社であり、「H HYUNDAI」事例11 の出願人である「現代自動車株式会社」と引用商標一~五の権利者も関連会社であるが、それらが提出したコンセントはいずれも認められなかった。国知局は現在、コンセントに対して非常に慎重な姿勢を示しており、同一又は類似商標が市場に出ることを回避するために、関連会社の類似商標の併存に対しても否定的な態度を取っていることが分かる。
(2)コンセントを斟酌的に考慮した事例
2022年以降、コンセントが認められた不服審判事件の件数は激減した。例えば、下表に挙げた「SWISS DELICE 狄妮詩」事例12 及び「東東農場」事例13 では、出願人は不服審判手続きにおいてコンセントを提出し、そして、国知局が下した審決によると出願商標の初歩的査定が認められたが、審決にはコンセントについて何のことも言及せず、出願商標と引用商標が全体的構成において区別することができることを理由に、商標の登録出願を認めたのである。上記から見れば、国知局は現在、コンセントを承認又は採用したことについて直接に審決に記載することを非常に慎重にし、たとえ出願人が提出したコンセントが審査官の最終判断に一定の心証影響を与えたとしても、商標自身が文字構成、視覚効果、称呼、観念等に一定の差異を有することのほうが、審査官が最終的に初歩的査定の判断を下すための基礎とされている。
なお、「東東農場」事例では、審査官は、出願人が「東東農場」を使用した証拠を提出したことを特に言及したとのことで、不服審判事件において、出願商標が実際に使用されており、ある程度の知名度を有するようになったら、引用商標との併存が関係公衆に誤認や混同を生じさせないことを証明するのに役立てる。
(3)コンセントが完全に認められた事例
いま、コンセントがそのまま拒絶不服審判の審理に認められるケースは非常に少ないが、著者は、いくつかの承認例を挙げて説明する。
「PILOT」事例14 では、裁判官は、一審判決において、係争商標と引用商標二、三は構成要素、デザインスタイル等に一定の相違があると判断し、且つ引用商標の権利者がコンセントを発行して係争商標の中国における併存登録を明確に認めたので、当該コンセントが消費者の利益を損害する恐れがある証拠がない限り、それを尊重する必要があるとして、改めて審決を下すよう国知局に命じた。そのため、国知局は2023年3月17日に、裁判所の判決に従って、改めて審理を行って審決を下し、出願商標を初歩的査定を許可した。
上記の「安心達CareDriver及び図」事例15 及び「CLYDE BERGEMANN及び図」事例16 を見てみると、前述のPILOT事例と同様に、一審裁判所の裁判官が、引用商標の権利者より発行した公認証済みのコンセントを得ており、かつ、両商標自身に一定の相違があるため、それらの併存が消費者を誤認・混同を生じさせるおそれがないと判断した。したがって、国知局は裁判所の判決に従い、2023年6月27日と2024年5月20日に、それぞれの審決を改めて下し、出願商標の初歩的査定を許可した。
まとめると、コンセントが認められた上記3件はいずれも司法手続きを経たものである。これで分かるように、コンセントに対して裁判所の態度は慎重にする傾向にあるにもかかわらず、一部の裁判官は依然として当事者の私権の処分を尊重し、支持する態度を持っている。現在、国知局が認めたコンセントの数は非常に少ないが、出願商標がすでに出願人に大量に使用されていて、企業にとって非常に重要な商標であり、引用商標と発音、外形、意味において一定の区別がある場合には、商標自身の相違点を強調し、消費者に混同や誤認を生じさせないという観点から、拒絶不服審判及び後続の行政訴訟手続きにおいて、コンセントや使用証拠などの提出により、積極的に権利化を求めることが考えられる。
なお、国知局と裁判所は現在、コンセントに対して非常に慎重な態度を取っているものの、実務では、企業の間に合理的な併存ニーズが確かに存在する。巨大な市場において、異なる商標権者の合理的な併存及び包容性のある発展をどのように実現するか、そしてどのように私権の利益を考慮しながら消費者の利益を保護するかは、企業や商標業界の皆様が現在注目している重要な課題でもある。報道によれば、日本は今年4月1日よりコンセント制度を正式に導入した。当該制度では、他人から承認を得ていることを証明する資料(コンセント)、及び、混同を生ずるおそれがないことを証明する資料が適用要件として設定されている。その中、「混同を生ずるおそれがない」については、日本特許庁は、非常に明確的な要求及び例示を提供した。例えば、商標が常に社名・社章等の他の標章と併用していること、指定商品の使用分野が相違であって、一方は出願商標を商品「医療用コンピュータプログラム」にのみ使用し、一方は引用商標を商品「ゲーム用コンピュータプログラム」にのみ使用していることが考慮事項として挙げられている。すなわち、出願人には、商標の構成、商標の使用方法、商標が使用されている商品や役務、商品の販売方法、販売時間、販売地域など、さまざまな側面から商標の使用実態を説明することが求められている。それに、コンセントの記載については、先願の商標権者が出願商標の登録を認めて、互いは商標の使用様態を既に確認しており、現在の使用態様は将来にわたって変動することがなく、商標の併存が現在乃至将来にわたって市場に混同を生じさせないことを明らかにする必要がある。現在日本で実施されているコンセント制度では、消費者の利益保護の観点から「混同を生ずるおそれがない」についてより詳細かつ明確な要件が設けられている。その「混同を生ずるおそれがない」を証明する方法は、参照・手本とする価値があると考える。筆者の考えでは、現在の拒絶不服審判事件において、出願人がコンセントを提出すると同時に、「混同を生じさせない」ことに関する証明資料を可能な限り多く提供できれば、拒絶理由の克服にプラスの効果が得られると考える。
3. 不服審判において、引用商標は権利者の企業登録が抹消され、実際には使用されていないことを理由に、混同を生じさせないと主張する
実務では、引用商標の商標権者(企業に限る)の登録が抹消され、主体資格が喪失したケースは少なくない。その場合、下表に示す「潮好味」事例17 、「岄界 799」事例18 、「龍の図」事例19 、「魚の図」字形20 、「WOLVES ESPORTS」事例21 との5つ事件のように、出願人は、「引用商標権者は既に登録抹消となっており、かつ、引用商標に対して譲渡等の処分を取っていないため、当該引用商標は実際には使用されておらず、市場において遊休商標となっており、出願商標と引用商標の併存が消費者に混同を生じさせることがない」と強調すれば、この主張はほぼ審査官が認めをもらうことができる。したがって、漢字商標、図形商標、英文商標のいずれであっても、拒絶通知書における引用商標が上記の状況に該当する場合には、出願人は、引用商標の権利者が登録抹消になったことを示す証拠(例えば、 「国家企業信用情報広報システム」の検索結果)を積極的に提出し、不服審判を請求すべきである。以下の成功事例も、この対応が効果的な対応戦略であることを有力的に証明している。
4. 不服審判請求において審理中止制度を最大限に活用して引用商標の権利状況の変化を待つよう審査官に請求する
2023年6月、国知局は「審判事件の中止事由に関する基準」の解説を公開した。現在、拒絶不服審判事件において、引用商標の権利状態が未確定であることを理由に審理中止を請求するケースが増加している。では、どのような場合に審理中止請求が認められるのでしょうか。実例を踏まえながら見てみましょう。
(1)相対的理由のみ存在する場合
下表に示す各事例から見ると、現状では、審理の中止は依然として「必須の場合」を原則としており、事件の審理において、それに関する先行権利の特定等の事由が、審理の結果に実質的な影響を及ぼす場合にのみ、審理の中止が適用される。すなわち、かかる引用商標がクリアされる可能性があり、例えば、引用商標が権利者の名称変更、譲渡、取下げ、三年不使用取消審判(以下、取消審判という)、異議申立、無効審判、存続期間が経過した時点から1年未満などの手続き・状況にある場合には、審査官は審理中止の請求を受け入れる可能性が高い。ただし、引用商標の一部のみが中止の要件に満たしており、これらの引用商標の最終的な権利状態が事件の結果に実質的な影響を及ぼさない場合には、審査官は審理を中止しない。
① 引用商標が住所変更手続きにある
「Q-SYS」事件22 では、4件引用商標の権利者が実際には出願人である(住所が異なるため別主体と見なされた)。出願人は審理中止を請求すると同時に、すでに世界知的所有権機関(WIPO)に住所変更申請を提出済みであり、出願商標の出願人名称及び住所が引用商標と一致するようになり、権利抵触がなくなる見込みだと主張した。審査官は当該中止請求を認め、関連変更手続きの完了を待ち、中国を指定する当該国際商標登録出願を許可した。
② 引用商標が無効審判手続きにある
「金日牌」事件23 では、出願人は、引用商標二と抵触する商品の権利化を放棄するとともに、引用商標一が無効審判手続きにあり、権利状態が不確定であることを理由に、審理中止を請求した。引用商標一の権利状態が「金日牌」事件の審理結果に実質的な影響を及ぼすという事実に鑑み、審査官は当該案件の審理を今年3月20日まで中止し、引用商標が「送電線用材料」等の商品において無効宣告公告とされた後、審判商品において出願商標を初歩的査定した。
③ 引用商標が取消審判手続き又は専用権期限満了してから一年未満である状況にある
下記の「Sheii」事件24 では、出願人は、引用商標一と抵触する商品「帽子」における登録出願を放棄するとともに、引用商標二が専用権期限満了してから一年未満である状況にあり、かつ、引用商標三が三年不使用取消審判手続きにあり、権利状態が不確定であることを理由に、審理中止を請求した。引用商標の権利状態が事件の審理結果に実質的な影響を及ぼすという事実に鑑み、当該中止請求は「審判事件の中止事由に関する基準」に満たしたので、審査官は当該案件の審理を今年1月30日まで中止し、出願商標と2件引用商標の抵触が解消した後、審判商品において出願商標を初歩的査定した。
④ 支障となる引用商標の全てをクリアすることができない
下記の「図形」事例25 では、不服審判を請求する当時、引用商標二に対しては取消審判を請求することができなかったため、出願人は引用商標一、三が取消審判手続きにあることを理由に、審理中止を請求した。審査官は当該案件を審理する際に、引用商標一、三が取消審判手続き中にあることを確認できたが、引用商標一、三の権利状態が不確定であるが本件の審理結論に影響を及ぼさない旨も明記した。とのことで、当該事件において、審査官は審理を中止せず、審理時の状態に基づいて直接に拒絶決定を下した。
(2)相対的理由と絶対的理由が同時に存在する場合
下記の「BE CHEF」事件26 に示すように、本件の拒絶理由には、相対的拒絶理由だけでなく、「商標法」第11条第1項(3)にも違反した絶対的拒絶理由も含まれるため、当該絶対的拒絶理由が成立すると判断された場合には、引用商標の権利状態が事件の審理結果に実質的な影響を及ぼさないことになる。したがって、当該事件では、審査官は出願人の審理中止請求を受け入れず、直接に拒絶決定を下した。
もちろん、拒絶不服審判事件において相対的および絶対的拒絶理由の両方を克服する機会がある場合には、積極的に試みる価値は依然としてある。たとえば、下表に示す「馬大姐剥皮軟糖」 27 、「1664 檳悦ビール」 28 及び「KOKSHETAU KAZAHSTAN TURAN WATER 及び図」29 の3件では、拒絶通知書には絶対的拒絶理由と相対的拒絶理由の両方が含まれている。出願人は、第10条第1項(7)の絶対的拒絶理由を克服するために、拒絶された商品の一部のみについて不服審判を請求するとともに、引用商標が拒絶不服審判手続き中、三年不使用取消審判手続き中、又は譲渡手続き中にあることを理由に、審理の中止を請求した。これら3つの事件では、出願は商品を一部削除・限定することにより、成功的に絶対的拒絶理由を克服できたため、相対的理由を克服するための審理中止の請求も審査官に認められたわけである。最終的に、引用商標が登録の障害とならなくなった後、3 件商標出願は初歩的査定された。
なお、上記の事例から、「商標法」第10条第1項(7)に基づく絶対的拒絶理由を受けた場合には、もし拒絶理由が商標の品質、原材料等の特徴に対する誤認に関すれば、拒絶不服審判の際に指定商品の一部削除(中国国内出願、マドプロ国際出願の両方とも可能)、または指定商品の限定(マドプロ国際出願に限る)を行うことは非常に有効な戦略になることが分かる。これら3つの事例では、出願人はそれぞれ指定商品を「フォンダン(糖菓)」、「ビール」、「ウォーター」などの関連する指定商品に限定することで、絶対的拒絶理由を克服することに成功した。
III. 結論
本稿では、筆者は自分の実務経験に基づいて、最新の事例を以って拒絶不服審判請求事件において商標同一・類似拒絶事由が発生した際に取り得る対策を分析してみた。前述したように、現時点では中国において拒絶不服審判事件の全体的な勝算は高いと言えないが、拒絶通知書を受領した後に拒絶理由を慎重に分析する限り、つまり各事件の個別状況に応じて分析を行い、出願戦略を調整し(商標デザインの調整、商品を削除又は限定して不服審判を行うなど)、そして代理人の専門的な支援と合力することで、審判の勝算率を最大限に高め、そして商標の権利化に向けたしっかりした基盤を築くことができると考える。
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備考:
1. 国家知識産権局商評字[2024]第0000136279号商標拒絶不服審判審決
2. 国家知識産権局商評字[2020]第0000054549号商標拒絶不服審判審決
3. 国家知識産権局商評字[2023]第0000373558号商標拒絶不服審判審決
4. 国家知識産権局商評字[2024]第0000000045号商標拒絶不服審判審決
5. 国家知識産権局商評字[2024]第0000138059号商標拒絶不服審判審決
6. 国家知識産権局商評字[2021]第0000279311号商標拒絶不服審判審決
7. 国家知識産権局商評字[2022]第0000246793号商標拒絶不服審判審決
8. 国家知識産権局商評字[2023]第0000234360 号商標拒絶不服審判審決
9. 国家知識産権局商評字[2023]第0000347699号商標拒絶不服審判審決
10. 国家知識産権局商評字[2024]第000011236号商標拒絶不服審判審決
11. 国家知識産権局商評字[2024]第0000089698 号商標拒絶不服審判審決
12. 国家知識産権局商評字[2023]第0000167828号商標拒絶不服審判審決
13. 国家知識産権局商評字[2024]第0000054710号商標拒絶不服審判審決
14. 国家知識産権局商評字[2020]第0000310730号再審第0000002074号商標拒絶不服審判審決
15. 国家知識産権局商評字[2020]第0000171061号再審第0000003881号商標拒絶不服審判審決
16. 国家知識産権局商評字[2021]第0000159878号再審第0000002833号商標拒絶不服審判審決
17. 国家知識産権局商評字[2024]第0000143674号商標拒絶不服審判審決
18. 国家知識産権局商評字[2024]第0000136927号商標拒絶不服審判審決
19. 国家知識産権局商評字[2024]第0000117464号商標拒絶不服審判審決
20. 国家知識産権局商評字[2024]第0000116089号商標拒絶不服審判審決
21. 国家知識産権局商評字[2024]第0000053364号商標拒絶不服審判審決
22. 国家知識産権局商評字[2024]第0000130705 号商標拒絶不服審判審決
23. 国家知識産権局商評字[2024]第0000069672号商標拒絶不服審判審決
24. 国家知識産権局商評字[2024]第0000020565 号商標拒絶不服審判審決
25. 国家知識産権局商評字[2024]第0000139733号商標拒絶不服審判審決
26. 国家知識産権局商評字[2024]第0000093481 号商標拒絶不服審判審決
27. 国家知識産権局商評字[2024]第0000126643号商標拒絶不服審判審決
28. 国家知識産権局商評字[2024]第0000112059号商標拒絶不服審判審決
29. 国家知識産権局商評字[2024]第0000132627号商標拒絶不服審判審決
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