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中国の実用新案審査の最新の動向


北京林達劉知識産権代理事務所 
 
ここ数年、中国の実用新案は、コストが低く、権利化が速く、権利行使時に、ドイツや日本などの国のように厳しい制限がないため、国内及び海外の出願人から多くの注目を集めており、出願件数が増加しつつある(下表を参照)。

表1:過去5年間の中国実用新案の出願件数


 
 
(注:2017年の国内の出願人及び海外の出願人各々の実用新案出願件数がまだ発表されていない)
 
しかし、中国特許庁が「専利品質向上プロジェクト実施計画」を制定し実施して以来、実用新案の審査にはいくつかの変化が見られる。

1. 新規性欠如と指摘された実用新案の件数が多くなった。

実用新案審査部門は現在、主に実用新案機械調査報告システムを用いて関連先行文献の自動的なプッシュを実行している。また、審査部門内部も、審査官の調査能力向上を要望している。結果からすれば、新規性欠如と指摘された実用新案の件数が増加しつつある。

弊社が受け取った新規性欠如に関する拒絶理由通知を例にすると、2017年から現在まで、弊所は、新規性欠如に関する拒絶理由通知書を21回受け取った。同時期に弊所を通じて出願した実用新案の出願件数は470件であるため、その比率は21/470=4.5%である。しかしながら、2017年以前は、弊所において、新規性欠如に関する拒絶理由通知を10回しか受け取らなかった。一方、2017年以前に出願した実用新案の出願件数は1992件もあったので、その比率は0.5%に過ぎなかった。

2017年から受け取った21回の新規性欠如に関する拒絶理由通知では、2017年上半期には2回、2017下半期には10回、2018年には9回であった。このように、2017年の中頃から、新規性欠如に関する拒絶理由通知は急激に増え、2018年にも高い発行率が維持されている。

新規性欠如に関する拒絶理由通知への応答については、まず、実用新案の審査官には進歩性を審査する権限がないため、出願人としては、応答時に新規性のみ考慮すればよい。次に、実務からすれば、殆どの審査官は、応答の機会を多くとも2回しか与えないので、2回応答しても審査官を説得できない場合、審査官は、当該実用新案出願を直接拒絶査定することとなる。

2. 実用新案出願の権利化期間が長くなった。

中国特許庁の発表した最新情報によれば、実用新案の権利化期間は7~14ヶ月まで長くなる見通しである。弊所の把握した実際のデータからすれば、最近登録になった実用新案は明らかに登録が前より遅くなった。2017年以前は、補正通知や拒絶理由通知を受け取らなかった実用新案出願はほとんど、願書提出日から3~4ヶ月以内に登録査定通知を受け取った。一方、2018に登録になったばかりの実用新案出願では、補正通知書又は拒絶理由通知書を受け取らなかったものはほとんど、願書提出日から5~6ヶ月後に登録査定通知を受け取ったものである。不備があって補正通知又は拒絶理由通知が発行された実用新案出願は、登録がさらに遅くなる。

3. 実用新案出願を審査する部門は多くなった。

中国では、審査官は、特許庁及び北京、河南、天津等に設けられる9つの審査協力センターに散在している。実用新案の審査はこれまで、北京審査協力センターの実用新案審査部に集中されていたが、実用新案の審査業務の増加に伴い、2017年年末から、河南審査協力センターも実用新案審査部を設立し、多くの実用新案出願の審査を担当するようになった。また、天津審査協力センターも、一部の実用新案出願の審査を担当し始めた。

最近受け取った拒絶理由通知からすれば、各審査協力センターの運用は完全に一致するわけではない。例えば、北京審査協力センターと河南審査協力センターとは、実用新案の保護対象属否などに関する判断の基準が異なる。また、実用新案出願がどこに割り当てられて審査されるかは、予測できないものである。よって、特にソフトウェア等に関する実用新案出願の場合、権利化の見込みを予測することは、少なくとも近いうちに難しくなるだろう。

要するに、現状からすれば、中国の実用新案の審査は厳しくなる傾向にある。これは、実用新案の出願人に制限を与える一方、中国の登録実用新案の品質を向上させ、低品質の実用新案を低減する上では有利になると思われる。

 
(2018)

ホットリンク:北京魏啓学法律事務所
©2008-2025 By Linda Liu & Partners, All Rights Reserved.
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