中華人民共和国特許法
(2020年10月17日採択、2021年6月1日から施行)
目次
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総則
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特許権付与の要件
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特許の出願
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特許出願の審査及び許可
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特許権の存続期間、消滅及び無効
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特許の強制実施許諾
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特許権の保護
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附則
総則
第1条
特許権者の適法な権利を保護し、発明・創作を奨励し、発明・創作の応用を推進し、革新能力を向上させ、科学技術の進歩及び経済社会の発展を促進する要請に応えるために、本法を制定する。
第2条
本法でいう発明・創作とは、発明、実用新案及び意匠をいう。
発明とは、製品、方法、又はその改良について提案された新しい技術的ソリューションをいう。
実用新案とは、製品の形状、構造又はこれらの組み合わせについて提案された、実用に適する新しい技術的ソリューションをいう。
意匠とは、製品の全体又は部分の形状、模様又はこれらの組み合わせ、及び色彩と形状、模様との組み合わせについて提案された、美感に富み、工業的応用に適する新しいデザインをいう。
第3条
国務院特許行政部門は全国の特許業務の管理に責任を負い、特許出願の受理と審査を一元化し、法律に基づいて特許権を付与する。
省、自治区、直轄市人民政府の特許業務管理部門は、その行政区画内の特許管理業務に責任を負う。
第4条
特許出願する発明・創作が国家の安全又は重大な利益に関わり、秘密保持が必要になる場合、国家の関係規定に基づいて扱う。
第5条
法律、社会道徳に違反し、又は公共の利益を害する発明・創作に対しては、特許権を付与しない。
取得又は利用が法律、行政法規の規定に違反した遺伝資源に依存して完成した発明・創作に対しては、特許権を付与しない。
第6条
所属機関・組織の任務を遂行したり、主として所属機関・組織の物的・技術的条件を利用したりして完成した発明・創作は、職務発明とする。職務発明について特許を受ける権利はその機関・組織に帰属し、出願が登録になると、その機関・組織が特許権者となる。その機関・組織は法律に基づいてその職務発明の特許を受ける権利及び特許権を処分し、かかる発明・創作の実施と活用を促進することができる。
非職務発明・創作について特許を受ける権利は発明者又は創作者に帰属し、出願が登録になると、その発明者又は創作者が特許権者となる。
所属機関・組織の物的・技術的条件を利用して完成した発明・創作について、機関・組織と発明者又は創作者との間に契約があり、特許を受ける権利及び特許権の帰属について約定されている場合は、その約定に従う。
第7条
発明者又は創作者が非職務発明・創作について特許出願することは、いかなる機関・組織又は個人も妨げてはならない。
第8条
二以上の機関・組織又は二人以上の個人が共同で完成させた発明・創作、又は一の機関・組織又は個人が他の機関・組織又は個人の委託を受けて完成させた発明・創作については、別途の合意がない限り、特許を受ける権利はこれを単独又は共同で完成させた機関・組織又は個人に帰属する。出願が許可された後、出願を行った機関・組織又は個人が特許権者となる。
第9条
同一の発明・創作には特許権が1件のみ付与される。ただし、同一の出願人が同日に同一の発明・創作について実用新案特許出願と発明特許出願の両方を行い、先に取得した実用新案特許権が消滅しておらず、かつ出願人が当該実用新案特許権を放棄する旨の意思表示を行った場合、発明特許権を付与することができる。
二以上の出願人が同一の発明・創作について個別に特許出願した場合、特許権は最先の出願人に付与する。
第10条
特許を受ける権利及び特許権は譲渡可能である。
中国の機関・組織又は個人が、特許を受ける権利又は特許権を外国人、外国企業又は外国の他の組織に譲渡する場合、関係法律、行政法規の規定に基づいて手続きを行わなければならない。
特許を受ける権利又は特許権を譲渡する場合、当事者は書面により契約を締結し、国務院特許行政部門に登録しなければならない。国務院特許行政部門はこれを公告する。特許を受ける権利又は特許権の譲渡は登録の日より効力を生じるものとする。
第11条
発明特許権及び実用新案特許権が付与された後、本法に別段の定めがある場合を除き、いかなる機関・組織又は個人も、特許権者の許諾を得ずに、その特許を実施することができず、すなわち、業として、その特許製品の製造、使用、販売の申し出、販売、輸入、又はその特許方法の使用、及びその特許方法により直接得られた製品の使用、販売の申し出、販売、輸入をすることができない。
意匠特許権が付与された後、いかなる機関・組織又は個人も、特許権者の許諾を得ずに、その特許を実施することができず、すなわち、業として、その意匠特許製品の製造、販売の申し出、販売、輸入をすることができない。
第12条
いかなる機関・組織又は個人も、他人の特許を実施する場合は、特許権者と実施許諾契約を締結し、特許権者に特許実施料を支払わなければならない。被許諾者は、契約の規定以外のいかなる機関・組織又は個人に、その特許の実施を許諾する権利を有しない。
第13条
発明特許出願の公開後、出願人は、その発明を実施した機関・組織又は個人に対し、適当な対価の支払を請求することができる。
第14条
特許を受ける権利又は特許権の共有者に権利の行使に関する約定がある場合、その約定に従う。約定がない場合、共有者は単独で当該特許を実施するか、又は他人に当該特許の通常実施権を許諾することができる。他人に当該特許の実施権を許諾する場合、実施料を共有者間で配分しなければならない。
前項に規定する場合を除き、共有の特許を受ける権利又は特許権を行使する場合、すべての共有者の同意を得なければならない。
第15条
特許権を付与された機関・組織は、職務発明の発明者又は創作者に報奨を与えなければならない。発明・創作の特許を実施した後、その普及応用の範囲及び取得した経済的利益に応じて、発明者又は創作者に合理的な対価を与えなければならない。
国家は、特許権を付与された機関・組織が、株、オプション、配当等を用いて所有権による激励を実施し、革新による収益を発明者又は創作者に合理的に共有することを奨励する。
第16条
発明者又は創作者は、特許書類に自分が発明者又は創作者であることを明記する権利を有する。
特許権者は、その特許製品又はその製品の包装に特許標識を表示する権利を有する。
第17条
中国に恒常的な居所又は営業所を有しない外国人、外国企業又は外国の他の組織が、中国で特許出願を行う場合、その所属国と中国が締結した協定又は共に加盟している国際条約又は相互主義に従い、本法に照らして扱う。
第18条
中国に恒常的な居所又は営業所を有しない外国人、外国企業又は外国の他の組織が、中国で特許出願及びその他の特許事務を行う場合、適法に設立された特許代理機関に委任しなければならない。
中国の機関・組織又は個人が国内で特許出願及びその他の特許事務を行う場合、適法に設立された特許代理機関に委任することができる。
特許代理機関は、法律及び行政法規を遵守し、委任者の依頼に基づいて特許出願又はその他の特許事務を取扱わなければならず、委任者の発明・創作の内容について、特許出願がすでに公開又は公告された場合を除き、秘密保持の責任を負う。特許代理機関の具体的な管理方法は国務院が規定するものとする。
第19条
いかなる機関・組織又は個人も、中国で完成した発明又は実用新案を外国に特許出願する場合、事前に国務院特許行政部門による秘密保持審査を受けなければならない。秘密保持審査の手続き、期間等は、国務院の規定に従って実施するものとする。
中国の機関・組織又は個人は、中華人民共和国が加盟した国際条約に基づいて国際特許出願を行うことができる。出願人が国際特許出願を行う場合、前項の規定を遵守しなければならない。
国務院特許行政部門は、中華人民共和国が加盟した国際条約、本法及び国務院の関係規定に基づいて国際特許出願を扱う。
本条第1項の規定に違反して外国に特許出願した発明又は実用新案の中国対応出願に対しては、特許権を付与しない。
第20条
特許の出願又は特許権の行使は、信義誠実の原則を遵守しなければならない。特許権を濫用して公共利益又は他人の合法的な権益を害してはならない。
特許権を濫用して競争を排除又は制限し、独占行為となった場合、「中華人民共和国独占禁止法」に基づいて扱う。
第21条
国務院特許行政部門は、客観的かつ公正で、正確かつ適時に、特許に係る出願及び請求を法に照らして取扱わなければならない。
国務院特許行政部門は特許情報公共サービス体制の構築を強化し、完全で正確且つ適時に特許情報を発表し、基本的な特許データを提供し、定期的に特許公報を発行して特許情報の普及及び利用を促進しなければならない。
特許出願の公開又は公告まで、国務院特許行政部門の役人及び関係者は、その内容に対して守秘責任を負う。
第2章 特許権付与の要件
第22条
特許権を付与する発明及び実用新案は、新規性、進歩性及び実用性を有しなければならない。
新規性とは、その発明又は実用新案が公知技術に該当せず、かつ、いかなる機関・組織又は個人が出願日より前に国務院特許行政部門に出願した、出願日以降に公開された特許出願書類又は公告された特許書類には、同一の発明又は実用新案の記載がないことをいう。
進歩性とは、公知技術に比べて、その発明が格別の実質的特徴及び顕著な進歩を有し、その実用新案が実質的特徴及び進歩を有することをいう。
実用性とは、その発明又は実用新案は、製造又は使用が可能であり、かつ積極的な効果を生じ得ることをいう。
本法にいう公知技術とは、出願日より前に国内外で公衆に知られている技術をいう。
第23条
特許権を付与する意匠は、公知意匠に該当しないものであり、かつ、いかなる機関・組織又は個人が出願日より前に国務院特許行政部門に出願した、出願日以降に公告された特許書類には、同一の意匠が記載されていないものでなければならない。
特許権を付与する意匠は、公知意匠又は公知意匠の特徴の組み合わせに比べて顕著な差異を有するものでなければならない。
特許権を付与する意匠は、出願日より前に他人がすでに取得した適法な権利に抵触することができない。
本法にいう公知意匠とは、出願日より前に国内外で公衆に知られている意匠をいう。
第24条
特許出願する発明・創作は、出願日より前の6か月以内に、次に掲げる事情のいずれかがあるときは、新規性を喪失しないものとする。
(1)国家の緊急事態又は非常事態が発生したときに、公共利益のために初めて公開した場合。
(2)中国政府が主催又は承認した国際展覧会において初めて展示した場合。
(3)所定の学術会議又は技術会議で初めて発表した場合。
(4)他人が出願人の同意を得ずにその内容を漏らした場合。
第25条
次に掲げるものに対しては、特許権を付与しない。
(1)科学的発見。
(2)知的活動の法則及び方法。
(3)疾患の診断及び治療方法。
(4)動物及び植物の品種。
(5)原子核の変換方法及び原子核の変換方法によって得られた物質。
(6)平面印刷品の模様、色彩又は両者の組み合わせについて主に標識として用いられるデザイン。
前項第(4)号に掲げる製品の生産方法に対しては、本法の規定に基づいて特許権を付与することができる。
第3章 特許の出願
第26条
発明又は実用新案の特許出願を行う場合は、願書、明細書及びその要約、並びに特許請求の範囲等の書類を提出しなければならない。
願書には、発明又は実用新案の名称、発明者の氏名、出願人の氏名又は名称、住所及びその他の事項を明記しなければならない。
明細書には、発明又は実用新案について、それが属する技術の分野における技術者がその実施をすることができる程度に、明瞭かつ完全な説明を記載しなければならず、必要に応じて図面を添付しなければならない。要約には、発明又は実用新案の技術の要点を簡潔に説明しなければならない。
特許請求の範囲には、明細書に基づいて、特許の保護を求める範囲を明瞭且つ簡潔に記載しなければならない。
発明・創作が遺伝資源に依存して完成したものである場合、出願人は出願書類に当該遺伝資源の直接的由来及び原始的由来を明示しなければならない。出願人が遺伝資源の原始的由来を明示できない場合、理由を説明しなければならない。
第27条
意匠の特許出願を行う場合は、願書、その意匠の図面又は写真、及びその意匠に関する簡単な説明等の書類を提出しなければならない。
出願人が提出したその図面又は写真は、特許の保護を求める製品の意匠を明瞭に示すものでなければならない。
第28条
国務院特許行政部門が特許出願書類を受け取った日を出願日とする。出願書類が郵送されたときは、郵便の消印日を出願日とする。
第29条
出願人は、発明又は実用新案を外国で最初に特許出願した日から12か月以内に、又は意匠を外国で最初に特許出願した日から6か月以内に、中国で同一の主題について特許出願するときは、その外国と中国が締結した協定、又は共に加盟している国際条約、又は優先権の相互承認原則に基づき、優先権を享受することができる。
出願人は発明又は実用新案を中国で最初に特許出願した日から12か月以内に、又は意匠を中国で最初に意匠出願した日から6か月以内に国務院特許行政部門に同一の主題について特許出願するときは、優先権を享受することができる。
第30条
出願人が発明特許、実用新案特許の優先権を主張するときは、出願時にその旨の書面を提出し、最初の出願日から16か月以内に最初の出願時の特許出願書類の謄本を提出しなければならない。
出願人が意匠特許の優先権を主張するときは、出願時にその旨の書面を提出し、3か月以内に最初の出願時の特許出願書類の謄本を提出しなければならない。
その旨の書面を提出しないか、又は期間内に特許出願書類の謄本を提出しないときは、優先権を主張していないものとみなす。
第31条
一の発明又は実用新案の特許出願は、一の発明又は実用新案に限るものとする。単一の全体的な発明思想に該当する二以上の発明又は実用新案は、一の願書で出願することができる。
一の意匠特許出願は、一の意匠に限るものとする。同一の製品に関する二以上の類似意匠、又は、同一の分類に属しかつ一組として販売若しくは使用される製品に用いられる二以上の意匠は、一の願書で出願することができる。
第32条
出願人は、特許権を付与されるまでは、その特許出願を随時取り下げることができる。
第33条
出願人は、その特許出願書類を補正することができる。ただし、発明及び実用新案の特許出願書類の補正は、当初の明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲を超えてはならない。意匠の特許出願書類の補正は、当初の図面又は写真に表された事項の範囲を超えてはならない。
第4章 特許出願の審査及び許可
第34条
国務院特許行政部門は、発明特許出願を受理した後、方式審査を経て本法の要件を満たしていると判断したときは、出願日から満18か月後に公開する。国務院特許行政部門は、出願人の請求に応じて、その出願を早期公開することができる。
第35条
発明特許出願の出願日から3年以内に、国務院特許行政部門は、出願人の随時の請求に基づき、その出願に対して実体審査を行うことができる。出願人が正当な理由なく期間内に実体審査を請求しないときは、その出願は取り下げられたものとみなす。
国務院特許行政部門は、必要と認めるときは、職権により発明特許出願に対する実体審査を行うことができる。
第36条
発明特許の出願人は、実体審査を請求する際に、その発明に関連する出願日以前の参考資料を提出しなければならない。
すでに外国で特許出願した発明の場合、国務院特許行政部門は、出願人に対し、所定の期間内に、その国がその出願を審査するために行った調査の資料又は審査結果の資料を提出するよう要請することができる。出願人が正当な理由なく期間内に提出しないときは、その出願は取り下げられたものとみなす。
第37条
国務院特許行政部門は、発明特許出願の実体審査を行った結果、本法に規定にする要件を満たしていないと判断したときは、出願人に通知し、所定の期間内に意見を陳述するか、又はその出願を補正するよう要請しなければならない。出願人が正当な理由なく期間内に意見陳述又は補正を行わないときは、その出願は取り下げられたものとみなす。
第38条
国務院特許行政部門は、発明特許出願は、出願人が意見陳述又は補正を行っていても、依然として本法に規定にする要件を満たしていないと判断したときは、拒絶査定しなければならない。
第39条
発明特許出願が実体審査を受けて拒絶理由が見つからなかった場合には、国務院特許行政部門は、発明特許権を付与する決定をし、発明特許証書を発行するとともに、登録及び公告を行う。発明特許権は公告の日より効力を生じるものとする。
第40条
実用新案及び意匠の特許出願は、方式審査を受けて拒絶理由が発見されなかった場合には、国務院特許行政部門は、実用新案特許権又は意匠特許権を付与する決定をし、対応する特許証書を発行するとともに、登録及び公告を行う。実用新案特許権及び意匠特許権は公告の日より効力を生じるものとする。
第41条
特許出願人は、国務院特許行政部門の拒絶査定を不服とするときは、通知を受領した日から3か月以内に、国務院特許行政部門に不服審判を請求することができる。国務院特許行政部門は審判を行った上で、審決をし、特許出願人に通知する。
特許出願人は、国務院特許行政部門の審決を不服とするときは、その通知を受領した日から3か月以内に裁判所に提訴することができる。
第5章 特許権の存続期間、消滅及び無効
第42条
発明特許権の存続期間は20年とし、実用新案特許権の存続期間は10年とし、意匠特許権の存続期間は15年とし、いずれも出願日から起算するものとする。
発明特許の出願日から満4年、且つ実体審査請求日から満3年後に発明特許が付与された場合、国務院特許行政部門は特許権者の請求に応じて、発明特許の権利化段階における不合理な遅延について、特許存続期間を補償しなければならない。ただし、出願人に起因する不合理な遅延は除く。
新薬の販売承認審査にかかった時間を補償するために、中国での販売承認を取得した新薬に関する発明特許について、国務院特許行政部門は特許権者の請求に応じて特許存続期間を補償することができる。補償される期間は5年を超えないものとし、新薬販売承認後の特許権の合計存続期間は14年を超えないものとする。
第43条
特許権者は特許権を付与された年から年金を納付しなければならない。
第44条
次の各号のいずれかに該当するときは、特許権は存続期間の満了前に消滅するものとする。
(1)規定に従って年金を納付しないとき。
(2)特許権者が書面での宣言によりその特許権を放棄したとき。
特許権が存続期間の満了前に消滅したときは、国務院特許行政部門はこれを登録して公告する。
第45条
国務院特許行政部門が特許権の付与を公告した日から、いかなる機関・組織又は個人も、その特許権の付与が本法の規定に違反したと認めたときは、その特許権に対して国務院特許行政部門に無効審判請求を提起することができる。
第46条
国務院特許行政部門は、特許権の無効審判請求に対して審査及び決定を迅速に行い、かつ請求人及び特許権者に通知しなければならない。特許権を無効とする審決は、国務院特許行政部門により登録公告される。
国務院特許行政部門による特許権を無効とする審決又は特許権を有効とする審決を不服とする場合、通知を受領した日から3か月以内に、裁判所に提訴することができる。裁判所は無効審判請求の相手方当事者に第三者として訴訟に参加するよう通知しなければならない。
第47条
無効とされた特許権は、最初から存在しなかったものとみなす。
特許権を無効とする審決は、特許権が無効とされる前に裁判所がすでに下して執行した特許権侵害の判決、調停書、すでに履行又は強制執行された特許権侵害紛争の処理決定、すでに履行された特許実施許諾契約及び特許権譲渡契約に対しては、遡及効力を有しない。ただし、特許権者の悪意により他人に損害を与えた場合は、賠償しなければならない。
前項の規定に基づいて特許権侵害の賠償金、特許実施料、特許権譲渡の対価を返還しないことが、明らかに公平の原則に違反するときは、全部又は一部の返還をしなければならない。
第6章 特許の強制実施許諾
第48条
国務院特許行政部門、地方人民政府の特許業務管理部門は、同格の関連部門と共同で措置を取り、特許公共サービスを強化して特許の実施と運用を促進しなければならない。
第49条
国有企業、事業機関の発明特許が、国家の利益又は公共の利益に対して重大な意味を有するときは、国務院の関係主管部門及び省、自治区、直轄市の人民政府は、国務院の許可を得て、許可された範囲内で普及応用させ、指定する機関・組織による実施を認めることを決定でき、これを実施する機関・組織は国家の規定に基づいて特許権者に実施料を支払う。
第50条
特許権者が、いかなる機関・組織又は個人に自らの特許の実施を許諾できることを自発的に書面で国務院特許行政部門に宣言し、特許実施料の支払い方、基準を明示した場合、国務院特許行政部門はそれを公表し、開放的許諾を実施する。実用新案特許、意匠特許に対し開放的許諾宣言を行う場合、特許権評価報告を提出しなければならない。
特許権者が開放的許諾宣言を取り下げる場合は、書面で行わなければならず、国務院特許行政部門はそれを公表する。開放的許諾宣言の取り下げが公表された場合、すでに与えられた開放的許諾の効力には影響を及ぼさない。
第51条
いかなる機関・組織又は個人は、開放的許諾を受ける意図がある場合、書面で特許権者に通知し、公表された特許実施料の支払い方、基準に従って実施料を支払えば、特許の実施許諾が与えられる。
開放的許諾期間中、特許権者は、支払うべき年金について減額又は免除を受ける。
開放的許諾を行う特許権者は被許諾者と特許実施料について協議した上で通常実施許諾をすることはできるが、当該特許について独占的又は排他的実施許諾をすることはできない。
第52条
当事者が開放的許諾の実施について紛争が生じた場合、当事者間の協議によって解決する。協議する意向がないか、又は協議しても解決できない場合、国務院特許行政部門に調停を申請することができ、裁判所に提訴することもできる。
第53条
次の各号のいずれかに該当するときは、国務院特許行政部門は、実施条件を備えている機関・組織又は個人の請求に応じて、発明特許又は実用新案特許の強制実施許諾を与えることができる。
(1)特許権者が特許権を付与された日から3年間、かつ特許出願日から4年間にわたって正当な理由なくその特許を実施していないか又はその特許の実施が不十分である場合。
(2)特許権者による権利行使の行為が法により独占行為と認定され、当該行為による競争への悪影響の解消又は軽減を目的とする場合。
第54条
国家の緊急事態又は非常事態が発生したとき、又は、公共の利益のために、国務院特許行政部門は、発明特許又は実用新案特許の強制実施許諾を与えることができる。
第55条
公衆の健康を守るために、特許権を取得した医薬品について、国務院特許行政部門は、それを製造して中華人民共和国の加盟した関連国際条約の規定に適合する国又は地域に輸出することを許す強制許諾を与えることができる。
第56条
特許権を取得した発明又は実用新案が、先に特許権を取得した発明又は実用新案より、顕著な経済的意義を持つ重要な技術的進歩を有し、その実施が先の発明又は実用新案の実施に依存する場合には、国務院特許行政部門は、後の特許権者の請求に応じて、先の発明又は実用新案の強制実施許諾を与えることができる。
前項の規定に基づいて強制実施許諾を与えた場合、国務院特許行政部門は、先の特許権者の請求に応じて、後の発明又は実用新案の強制実施許諾を与えることもできる。
第57条
強制許諾に係る発明・創作が半導体技術である場合、その実施は公共の利益の目的及び本法第53条第(2)号に規定する事由に限るものとする。
第58条
本法第53条第(2)号、第55条の規定に基づいて与えられた強制許諾を除き、強制許諾の実施は主に国内市場への供給のためでなければならない。
第59条
本法第53条第(1)号、第56条の規定に基づいて強制実施許諾を申請する機関・組織又は個人は、特許権者にその特許の実施許諾を合理的な条件で求めていても、合理的な期間内に許諾を取得できなかったことを証明する証拠を提出しなければならない。
第60条
国務院特許行政部門による強制実施許諾付与の決定は、特許権者に適時に通知し、登録及び公告をしなければならない。強制実施許諾付与の決定は、強制許諾の理由に応じて実施の範囲及び期間を定めなければならない。強制許諾の理由が消滅し、かつ再び発生しないときは、国務院特許行政部門は特許権者の請求に応じて、審査をした上で強制実施許諾を終了する旨の決定をするものとする。
第61条
強制実施許諾を取得した機関・組織又は個人は、独占的実施権を有せず、かつ他人に実施を許諾する権利を有しない。
第62条
強制実施許諾を取得した機関・組織又は個人は、特許権者に合理的な実施料を支払うか、又は中華人民共和国の加盟した関連国際条約の規定に基づいて実施料の問題を解決しなければならない。実施料を支払うときは、その金額は双方が協議するものとする。双方が合意に達することができないときは、国務院特許行政部門が裁決するものとする。
第63条
特許権者が国務院特許行政部門の強制実施許諾に関する決定を不服とするとき、特許権者及び強制実施許諾を取得した機関・組織又は個人が国務院特許行政部門の強制実施許諾の実施料に関する裁決を不服とするときは、通知を受領した日から3か月以内に裁判所に提訴することができる。
第7章 特許権の保護
第64条
発明又は実用新案特許権の権利範囲は、その請求項の内容によるものとし、明細書及び図面は請求項の内容の解釈に用いることができる。
意匠特許権の権利範囲は、図面又は写真に表されたその製品の意匠によるものとし、簡単な説明は図面又は写真に表された製品の意匠の解釈に用いることができる。
第65条
特許権者の許諾を得ずにその特許を実施し、すなわちその特許権を侵害し、紛争を引き起こした場合は、当事者が協議により解決するものとする。協議を望まず、又は協議が成立しない場合には、特許権者又は利害関係者は裁判所に提訴することができ、特許業務管理部門に処理を請求することもできる。特許業務管理部門が処理にあたり、侵害行為が成立すると認定したときは、侵害者に直ちに侵害行為を停止するよう命じることができる。当事者がこれを不服とするときは、処理通知を受領した日から15日以内に、「中華人民共和国行政訴訟法」に基づいて裁判所に提訴することができる。侵害者が期間を経過しても提訴せず、かつ侵害行為を停止しない場合には、特許業務管理部門は裁判所による強制執行を申請することができる。処理を行う特許業務管理部門は当事者の請求に応じて、特許権侵害の賠償額について調停を行うことができる。調停が成立しない場合、当事者は「中華人民共和国民事訴訟法」に基づいて裁判所に提訴することができる。
第66条
特許権侵害の紛争が新製品の製造方法に関する発明特許に関わる場合、同一の製品を製造する機関・組織又は個人は、その製品の製造方法が当該特許方法と異なることを証明しなければならない。
特許権侵害の紛争が実用新案特許又は意匠特許に関わる場合、裁判所又は特許業務管理部門は、特許権者又は利害関係者に対し、特許権侵害の紛争を審理、処理するための証拠として、国務院特許行政部門によって対象実用新案又は意匠に対する調査、検討及び評価の上で発行された特許権評価報告を提出するよう要請することができる。特許権者、利害関係者又は被疑侵害者は、特許権評価報告を自発的に提出することもできる。
第67条
特許権侵害紛争において、被疑侵害者が、その実施した技術又は意匠が公知技術又は公知意匠であることを証拠により証明できる場合、特許権侵害に該当しないものとする。
第68条
特許を詐称した者に対しては、法律に基づいて民事責任を負わせるほか、特許法執行担当部門は、その是正を命じて公表し、不法所得を没収するとともに、不法所得の5倍以下の罰金を科すことができる。不法所得がないか、又は不法所得が5万元以下であるときは、25万元以下の罰金を科すことができる。犯罪となるときは、法律に基づいて刑事責任を追及するものとする。
第69条
特許法執行担当部門は、取得した証拠に基づき、特許詐称容疑の行為を摘発するにあたって、次の措置を取る権利を有する。
(1)関係当事者に尋ね、不法容疑行為に関する事情を調査する。
(2)当事者の不法容疑行為の場所に対し、実地検査を実施する。
(3)不法容疑行為に関係する契約、領収書、帳簿及び他の関連資料を調査・複製する。
(4)不法容疑行為に関係する製品を検査する。
(5)特許詐称をしたと証拠により証明された製品を差し押さえるか又は留置する。
特許業務管理部門は、特許権者又は利害関係者の請求に応じて特許権侵害紛争を処理するにあたって、前項の第(1)号、第(2)号、第(4)号に掲げる措置を取ることができる。
特許法執行担当部門、特許業務管理部門が法律に基づき前二項に規定する職権を行使するとき、当事者は協力、支援しなければならず、拒否、妨害をしてはならない。
第70条
国務院特許行政部門は、特許権者又は利害関係者の請求に応じて、全国で重大な影響を生じる特許侵害紛争を処理することができる。
地方人民政府の特許業務管理部門は、特許権者又は利害関係者の請求に応じて、特許権侵害紛争を処理するにあたって、本行政区画内の同一の特許権に係る侵害事件に対しては併合処理を行うことができる。多区画間の同一の特許権に係る侵害事件の場合、上位の地方人民政府の特許業務管理部門に処理を請求することができる。
第71条
特許権侵害の賠償額は、権利者が侵害により受けた実際の損害又は侵害者が侵害により得た利益に基づいて算定するものとする。権利者の損害又は侵害者の得た利益の算定が困難な場合、当該特許の実施許諾料の倍数を参酌して合理的に算定するものとする。故意により特許権を侵害し、情状が深刻な場合、上記方法で算定した金額の1倍以上5倍以下で賠償額を決定することができる。
権利者の損害、侵害者の得た利益及び特許の実施許諾料の算定がともに困難な場合には、裁判所は特許権の種類、侵害行為の性質や情状などに応じて、3万元以上500万元以下の賠償額を決定することができる。
賠償額は、権利者が侵害行為を差し止めるために支払った合理的な支出を含むものとする。
権利者が立証に尽力したものの、侵害行為に関連する帳簿、資料が主に侵害者により把握されている場合、裁判所は賠償額を算定するために、侵害者に対して侵害行為に関連する帳簿、資料の提出を命じることができる。侵害者が提出しないか、又は虚偽の帳簿や資料を提出した場合、裁判所は、権利者の主張及び提出した証拠を参考にして賠償額を判定することができる。
第72条
特許権者又は利害関係者は、他人が特許権侵害行為、その権利の実現を妨害する行為を実施しているか、又は実施しようとしており、それを直ちに差し止めないと、自らの適法な権益が回復し難い損害を蒙ることを証拠により証明できるときは、提訴前に、法律に基づいて、裁判所に財産保全措置、特定の行為を命じる命令、又は特定の行為を差し止める命令を出すよう申請することができる。
第73条
特許権侵害行為を差し止めるために、証拠が消滅したり、後に取得が困難になったりする可能性がある場合には、特許権者又は利害関係者は提訴前に、法律に基づいて裁判所に証拠の保全を申請することができる。
第74条
特許権侵害の訴訟時効は3年とし、特許権者又は利害関係者が侵害行為及び侵害者を知った日又は知り得る日より起算するものとする。
発明特許出願の公開から特許権付与までの間に、その発明を実施したが、適当な実施料を支払っていない者に対して、特許権者が実施料の支払いを求める場合の訴訟時効は3年とし、他人がその発明を実施したことを特許権者が知った日又は知り得る日から起算するものとする。ただし、特許権者が特許権付与の日より前にそれを知ったか、又は知り得るときは、特許権付与の日から起算するものとする。
第75条
次の各号のいずれかに該当するときは、特許権侵害とみなさない。
(1)特許権者又はその許諾を得た機関・組織又は個人が、特許製品又は特許方法により直接得られた製品を販売した後に、当該製品の使用、販売の申し出、販売、輸入を行う場合。
(2)特許出願日より前にすでに同一の製品の製造、同一の方法の実施を行ったか、又はすでに製造、実施のために必要な準備をしており、かつ従前の範囲内でのみ製造、実施を継続する場合。
(3)一時的に中国の領土、領海、領空を通過する外国の輸送手段が、所属国と中国が締結した協定又は共に加盟した国際条約、又は相互主義に従い、その輸送手段自身の必要のためにその装置及び設備において関係特許を実施する場合。
(4)科学研究及び実験のためにのみ関係特許を実施する場合。
(5)行政審査に必要な情報を提供するために、特許医薬品又は特許医療機器の製造、使用、輸入を行う場合、及び、そのためにのみ特許医薬品又は特許医療装置の製造、輸入を行う場合。
第76条
医薬品販売承認審査において、医薬品販売承認申請人と、かかる特許権者又は利害関係者との間に、承認申請に係る医薬品に関する特許権で紛争が発生した場合、かかる当事者は裁判所に提訴し、承認申請に係る医薬品に関する技術が他人の医薬品特許の権利範囲に属するかについて判決するよう請求することができる。国務院医薬品監督管理部門は、所定の期間内に、裁判所の確定した裁判に基づいて、かかる医薬品の販売承認を保留するかについて決定することができる。
医薬品販売承認申請人と、かかる特許権者又は利害関係者は、承認申請に係る医薬品に関する特許権紛争について、国務院特許行政部門に行政裁決を請求することもできる。
国務院医薬品監督管理部門は、国務院特許行政部門とともに、医薬品販売承認審査及び医薬品販売承認申請段階における特許権紛争の解決に関する詳細なつなぎ措置を策定し、国務院の同意を得てから実施するものとする。
第77条
特許権者の許諾を得ずに製造、販売された特許権侵害製品であることを知らずに、業としてその使用、販売の申し出又は販売を行い、その製品の適法な由来を証明することができるときは、賠償責任を負わないものとする。
第78条
本法第20条の規定に違反して外国に特許出願し、国家の秘密を漏らした者に対しては、所属する機関・組織又はその上位主管機関が行政処分を与えるものとする。犯罪となるときは、法律に基づいて刑事責任を追及するものとする。
第79条
特許業務管理部門は、社会に向ける特許製品の推奨などの事業活動に関与することができない。
特許業務管理部門が前項の規定に違反した場合、その上位機関又は監察機関が是正を命じ、影響を解消し、不法収入がある場合はそれを没収するものとする。情状が深刻な場合は、直接の責任を負う主管者及びその他の直接責任者に対し、法律に基づいて処分を与えるものとする。
第80条
特許業務の管理に従事する国家機関の役人及びその他の関係国家機関の役人が、職務怠慢、職権濫用をしたり、私情にとらわれて不正を行ったりして、犯罪となるときは、法律に基づいて刑事責任を追及するものとし、犯罪とならないときは、法律に基づいて処分を与えるものとする。
第8章 附則
第81条
国務院特許行政部門に特許出願又はその他の手続を行うときは、規定に従って費用を納付しなければならない。
第82条
本法は、1985年4月1日より施行するものとする。