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国家薬監局、国家知識産権局による「医薬品特許紛争の早期解決体制の実施措置(試行)」の公布に関する公告(2021年第89号)


「中華人民共和国特許法」に基づき、国家薬監局、国家知識産権局は「医薬品特許紛争の早期解決体制の実施措置(試行)」を策定した。国務院の同意を得て、同措置を以下のとおり公布し、公布の日から施行する。
 
  【添付】
  1. 医薬品特許紛争の早期解決体制の実施措置(試行)
  2.「医薬品特許紛争の早期解決体制の実施措置(試行)」の政策解読
 
国家医薬品監督管理局 国家知識産権局
  2021年7月4日
 
 
医薬品特許紛争の早期解決体制の実施措置(試行)
 
1  医薬品特許権者の適法な権益を保護し、新薬の研究を奨励するとともに、高水準の後発薬の発展を促進するため、医薬品特許紛争の早期解決体制を確立させ、本措置を定める。

2 国務院医薬品監督管理部門は、医薬品販売承認保持者が中国での販売承認を受けた医薬品に関する特許情報を登録するための中国販売医薬品特許情報登録プラットフォームの構築を実現させる。

かかる特許情報が中国販売医薬品特許情報登録プラットフォームに登録されていない場合には、本措置を適用しない。

3 国家医薬品審査評価機関は、中国販売医薬品特許情報登録プラットフォームの構築及び保守を担当し、中国での販売承認を受けた医薬品に関する特許情報を公開する。

4  医薬品販売承認保持者は、医薬品販売承認書を取得してから30日以内に、医薬品の名称、剤形、仕様、販売承認保持者、関連特許番号、特許の名称、特許権者、特許被許諾者、特許登録日及び権利期間の満了日、特許の状態、特許のカテゴリー、医薬品と関連特許の請求項との対応関係、郵送先住所、連絡先、連絡手段等を自発的に登録する。かかる情報に変化があった場合、医薬品販売承認保持者は、情報変更が確定してから30日以内に更新しなければならない。

医薬品販売承認保持者は、登録した関連情報の信ぴょう性、正確性及び完全性について責任を負い、異議を受けたときは適時に確認・対応して記録しなければならない。登録情報は、特許登録原簿、特許公報及び医薬品販売承認書の関連情報に一致するものでなければならない。医薬用途特許は、販売承認を受けた医薬品の説明書の適応症又は効能・効果に一致するものでなければならない。かかる特許の権利範囲は、販売承認を受けた医薬品の技術を包含するものである。かかる情報を変更する場合は、理由を説明して公開するものとする。

5 化学医薬品の販売承認保持者は、中国販売医薬品特許情報登録プラットフォームに医薬活性成分の化合物特許、活性成分を含む医薬組成物特許、医薬用途特許を登録することができる。

6 化学後発薬申請者は、医薬品販売承認申請を行う際に、中国販売医薬品特許情報登録プラットフォームに登録された特許情報に照合して、先発薬に係る医薬特許のそれぞれについて宣言を行わなければならない。宣言は下記の4つに分類される。

宣言Ⅰ:中国販売医薬品特許情報登録プラットフォームには、先発薬に関する特許情報はない。

宣言Ⅱ:中国販売医薬品特許情報登録プラットフォームに収録された先発薬に関する特許は、消滅もしくは無効になったか、又は、後発薬申請者は特許権者から、かかる特許の実施許諾を取得した。

宣言Ⅲ:中国販売医薬品特許情報登録プラットフォームには、先発薬に関する特許は収録されているが、後発薬申請者は、特許存続期間の満了まで申請に係る後発薬の販売を保留することを承諾する。

宣言Ⅳ:中国販売医薬品特許情報登録プラットフォームに収録された先発薬に関する特許は、無効にされるべきものであるか、又は、後発薬は、かかる特許の範囲外である。

後発薬申請及びその宣言は、国家医薬品審査評価機関の情報プラットフォームにおいて公表される。

後発薬申請者は、その宣言の信ぴょう性、正確性について責任を負う。国家医薬品審査評価機関は、後発薬申請を受理してから10営業日以内に、情報プラットフォームにおいて申請情報及びその宣言を一般向けに公開する。後発薬申請者は、その宣言及び宣言の根拠を販売承認保持者に通知しなければならない。販売承認保持者が特許権者ではない場合は、販売承認保持者が特許権者に通知する。かかる特許の範囲外である旨の宣言を行う場合、宣言の根拠は、後発薬のかかる技術と、かかる特許の関連請求項との対比表、及び関連技術資料を含むものとする。紙資料の他、後発薬申請者はさらに、販売承認保持者が中国販売医薬品特許情報登録プラットフォームに登録した電子メールアドレスに、宣言及び宣言の根拠を送付し、その履歴を残すものとする。

7 特許権者又は利害関係者は、4つの特許宣言について異議がある場合、国家医薬品審査評価機関における医薬品販売承認申請の公開日から45日以内に、承認申請に係る医薬品のかかる技術が、かかる特許の範囲内であるかについて、裁判所に提訴するか、又は国務院特許行政部門に行政裁決を申請することができる。当事者は、国務院特許行政部門による行政裁決を不服とする場合、行政裁決書を受け取った後、法律に基づいて裁判所に提訴することができる。

特許権者又は利害関係者は、所定の期間内に提訴又は行政裁決申請を行った場合、裁判所又は国務院特許行政部門による手続開始又は受理の日から15営業日以内に、手続開始又は受理の通知書の謄本を国家医薬品審査評価機関に提出するとともに、後発薬申請者に通知しなければならない。

8 裁判所又は国務院特許行政部門による手続開始又は受理の通知書の謄本を受け取った場合、国務院医薬品監督管理部門は、化学後発薬承認申請に対して9か月の保留期間を設ける。保留期間は、裁判所又は国務院特許行政部門による手続開始又は受理の日から、1回のみ設ける。保留期間中、国家医薬品審査評価機関は技術審査評価を停止しない。

特許権者又は利害関係者は、所定の期間内に提訴又は行政裁決申請を行わなかった場合、国務院医薬品監督管理部門は、技術審査評価の結論及び後発薬申請者が提出した宣言の状況に応じて、販売承認可否の決定を直接行う。後発薬申請者は、関係規定に基づいて提訴又は行政裁決申請を行うことができる。

9 保留期間が発生した化学後発薬承認申請の場合、特許権者又は利害関係者、化学後発薬申請者は、判決書又は決定書等を受け取ってから10営業日以内に、かかる文書を国家医薬品審査評価機関に送付しなければならない。

技術審査評価に合格した化学後発薬承認申請の場合、国家医薬品審査評価機関は、裁判所の確定判決又は国務院特許行政部門の行政裁決に応じて取り扱う。

(1)かかる特許の範囲内であると確認された場合、かかる化学後発薬承認申請の行政承認段階への移行を特許存続期間の満了直前まで保留する。

(2)かかる特許の範囲外であると確認されたか、又は双方が和解した場合、かかる化学後発薬承認申請を手続きに従って行政承認段階に移行させる。

(3)かかる特許が法律に基づいて無効にされた場合、かかる化学後発薬承認申請を手続きに従って行政承認段階に移行させる。

(4)保留期間を経過して、国務院医薬品監督管理部門が裁判所の確定判決若しくは調停書、又は国務院特許行政部門の行政裁決を受け取らなかった場合、かかる化学後発薬承認申請を手続きに従って行政承認段階に移行させる。

(5)国務院医薬品監督管理部門の行政承認期間中に、裁判所の確定判決又は国務院特許行政部門の行政裁決を受け取り、かかる特許の範囲内であると確認された場合、かかる化学後発薬承認申請は国家医薬品審査評価機関により本条第2項第1号の規定に基づいて取り扱われる。

国務院医薬品監督管理部門が承認保留を決定した後、裁判所が元の行政裁決を取消したり、双方が和解したり、かかる特許が無効になったり、特許権者、利害関係者が訴訟又は行政裁決申請を取り下げたりした場合、後発薬申請者は、国務院医薬品監督管理部門に後発薬の販売承認を申請することができ、国務院医薬品監督管理部門は、承認可否の決定を行うことができる。

10 宣言Ⅰ、Ⅱに係る化学後発薬承認申請の場合、国務院医薬品監督管理部門は、技術審査評価の結論に応じて、承認可否の決定を行う。宣言Ⅲに係る化学後発薬承認申請の場合、技術審査評価に合格したものに対して販売を承認する旨の決定を行うが、かかる医薬品は、かかる特許の存続期間及び市場独占期間の満了後に販売可能になる。

11 パテント・チャレンジに最初に成功して販売承認を受けた最初の化学後発薬に対して、市場独占期間を与える。国務院医薬品監督管理部門は、当該医薬品が承認を受けた日から12か月以内に同種の後発薬の販売を承認しないものとするが、共同してパテント・チャレンジに成功したものはこの限りでない。市場独占期間は、パテント・チャレンジされた医薬品の元特許存続期間を超えないものとする。市場独占期間中、国家医薬品審査評価機関は技術審査評価を停止しない。技術審査評価に合格した化学後発薬承認申請については、かかる化学後発薬申請の行政承認段階への移行を市場独占期間の満了直前まで保留する。

パテント・チャレンジに成功したとは、化学後発薬申請者が宣言Ⅳを提出するとともに、特許無効審判請求を行い、かかる特許が無効になったことから、後発薬の販売承認が可能になったことをいう。

12  漢方薬、バイオ製品の販売承認保持者は、本措置第2条、第3条、第4条、第7条に従って、かかる特許情報の登録等を行う。漢方薬の場合は、漢方薬組成物特許、漢方薬抽出物特許、医薬用途特許を登録することができ、バイオ製品の場合は、活性成分の配列構造特許、医薬用途特許を登録することができる。

漢方薬の同名同処方薬、バイオ後発薬の申請者は、本措置第6条に従って、かかる特許宣言を行う。

13  漢方薬の同名同処方薬及びバイオ後発薬の承認申請の場合、国務院医薬品監督管理部門は、技術審査評価の結論に応じて、販売承認可否の決定を直接行う。その技術がかかる特許の範囲内であると裁判所又は国務院特許行政部門で確認された場合、かかる医薬品は、かかる特許の存続期間満了後に販売可能になる。

14  化学後発薬、漢方薬の同名同処方薬、バイオ後発薬等が販売承認を受けた後、特許権者又は利害関係者が、かかる医薬品がその特許への侵害となるとして、紛争が発生した場合、「中華人民共和国特許法」等の法律法規の規定に基づいて解決する。法律に基づいて発行された医薬品販売承認決定は取消されず、その効力は影響されない。

15 偽りの宣言を提出するなどの虚偽行為をしたり、権利範囲が販売承認を受けた医薬品に関係しない特許、又は登録対象外のカテゴリーの特許を故意により中国販売医薬品特許情報登録プラットフォームに登録したりして、特許権者のかかる特許権を侵害したり、他に当事者に損害を与えたりした場合、法律に照らしてその責任を負担する。

16  本措置は公布の日から施行する。
 
「医薬品特許紛争の早期解決体制の実施措置(試行)」の政策解読
 
1. 「医薬品特許紛争の早期解決体制の実施措置(試行)」の起草背景は?

医薬品特許紛争の早期解決体制とは、医薬品販売承認手続きと、医薬品特許紛争の解決手続きとをつなぐ制度である。中共中央弁公庁、国務院弁公庁が発表した「承認審査制度の改革徹底化及び医薬品・医療機器の革新奨励に関する意見」「知的財産権の保護強化に関する意見」はいずれも、医薬品のパテントリンケージ制度の確立を提案した。2020年10月、新たに改正された「中華人民共和国特許法」(以下、「特許法」という。)第76条には、医薬品特許紛争の早期解決に関する規定が導入され、「国務院医薬品監督管理部門は、国務院特許行政部門とともに、医薬品販売承認審査及び医薬品販売承認申請段階における特許権紛争の解決に関する詳細なつなぎ措置を策定し、国務院の同意を得てから実施する。」と明確に定められた。

党中央、国務院の方針を徹底し、中国の医薬品特許紛争の早期解決体制を確立させるため、国家薬監局、国家知識産権局は、関係部門とともに、改正特許法の下で、医薬品特許紛争の早期解決体制の詳細な制度について鋭意検討し、各国の運用を参考にしながら、業界、協会、専門家等の意見を募集して見直した上で、「医薬品特許紛争の早期解決体制の実施措置(試行)」(以下、「措置」という。)を策定した。

2. 「措置」の目的及び主な内容は?

「措置」は、医薬品の販売承認審査段階における特許紛争の解決体制を提供することにより、医薬品の特許権者の適法な利益を守り、後発薬販売後の特許侵害リスクを低減させることを目的とする。「措置」の主な内容は、プラットフォームの構築及び情報公開制度、特許登録制度、後発薬の特許宣言制度、司法及び行政のリンケージ制度、承認保留期間制度、医薬品承認審査の分類処理制度、最初の後発薬の市場独占期間制度等を含む。

3. 医薬品特許紛争早期解決のルートは?

「措置」は、「特許権者又は利害関係者は、4つの特許宣言について異議がある場合、承認申請に係る医薬品のかかる技術が、かかる特許の範囲内であるかについて、裁判所に提訴するか、又は国務院特許行政部門に行政裁決を申請することができる」と定めており、つまり、司法ルートと行政ルートがある。所定の期間内に、特許権者は自由に選択できる。当事者が、国務院特許行政部門に行政裁決を申請するというルートを選択し、行政裁決を不服として裁判所に取消訴訟をさらに提起した場合、保留期間は延長しない。

特許権者又は利害関係者が、所定の期間内に提訴又は行政裁決申請を行わなかった場合、後発薬申請者は、その医薬品に係る技術が、かかる特許の範囲外であることを確認するために、かかる規定に従って提訴又は行政裁決申請を行うことができる。

4. 医薬品特許紛争の早期解決体制を適用できる医薬品特許は?

中国販売医薬品特許情報登録プラットフォームに登録できる医薬品特許としては、化学医薬品(原薬を含まない。)の場合は、医薬活性成分の化合物特許、活性成分を含む医薬組成物特許、医薬用途特許であり、漢方薬の場合は、漢方薬組成物特許、漢方薬抽出物特許、医薬用途特許であり、バイオ製品の場合は、活性成分の配列構造特許、医薬用途特許である。中間体、代謝物、結晶形、製造方法、検査方法等の特許は適用対象外である。

5. 特許宣言はどのように行うか?

化学後発薬申請者、漢方薬の同名同処方薬申請者、バイオ後発薬申請者は、医薬品販売承認申請を行う際に、中国販売医薬品特許情報登録プラットフォームに公開された特許情報に照合して、先発薬に係る医薬特許のそれぞれについて宣言を行わなければならない。後発薬の販売承認申請が受理されてから10営業日以内に、後発薬申請者は、その宣言及び宣言の根拠を販売承認保持者に通知しなければならない。かかる特許の範囲外である旨の宣言を行う場合、宣言の根拠として、後発薬の技術と特許のクレームとの対比表、及び関連技術資料を準備する必要がある。紙資料の他、後発薬申請者はさらに、販売承認保持者が中国販売医薬品特許情報登録プラットフォームに登録した電子メールアドレスに、宣言及び宣言の根拠を送付する必要があり、送付履歴を残すべきである。

6. 保留期間はどのような場合に発生するか?

特許権者又は利害関係者は、4つの特許宣言について異議がある場合、国家医薬品審査評価機関における医薬品販売承認申請の公開日から45日以内に、承認申請に係る医薬品のかかる技術が、かかる特許の範囲内であるかについて、裁判所に提訴するか、又は国務院特許行政部門に行政裁決を申請することができる。特許権者又は利害関係者は、所定の期間内に提訴又は行政裁決申請を行った場合、裁判所又は国務院特許行政部門による手続開始又は受理の日から15営業日以内に、手続開始又は受理の通知書の謄本を国家医薬品審査評価機関に提出するとともに、後発薬申請者に通知しなければならない。裁判所又は国務院特許行政部門による手続開始又は受理の通知書の謄本を受け取った場合、国務院医薬品監督管理部門は、化学後発薬承認申請に対して9か月の保留期間を設ける。

化学後発薬申請者が、中国販売医薬品特許情報登録プラットフォームに収录された先発薬に関する特許が無効にされるべきものであるという宣言を行った場合、特許権者又は利害関係者が、その後発薬の技術がかかる特許の範囲内であるかについて、裁判所への提訴又は国務院特許行政部門への行政裁決申請を行わなければ、保留期間は発生しない。

7. 特許紛争が早期に解決されず、後発薬が販売された場合は?

中国販売医薬品特許情報登録プラットフォームに特許情報が登録されていないものは、本措置の適用対象外である。特許権者又は利害関係者が、所定の期間内に、提訴又は行政裁決申請を行わなかった場合、保留期間は設けられない。このように特許紛争が早期に解決されなかった場合、後発薬が販売承認を受けた後、特許権者が、後発薬がその特許の範囲内であるとして、紛争があった場合は、「中華人民共和国特許法」等の法律法規に基づいて解決する。法律に基づいて発行された医薬品販売承認決定は取消されず、その効力は影響されない。
 
2021年7月4日
国家知識産権局より
 


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