北京林達劉知識産権代理事務所
中国弁理士 張 宝瑜
中国の審査実務では、分割出願は通常、①審査官から単一性違反の拒絶理由を受けて請求項の一部を削除せざるを得ず、その削除した発明の権利化を図るために分割出願する場合と、②親出願の係属中において、出願人が自発的に分割出願する場合とに分けられます。出願人が自発的に分割出願する場合の多くは、分割出願で新たな特許請求の範囲を作成し、異なる権利範囲を有する特許権を取得することを目的としますが、親出願で権利化の見込みがない場合には、審査官の変更を図るために分割出願をすることも時にはあります。
しかし、分割出願すれば、必ず審査官が代わるのでしょうか。この点について、中国特許法及び審査基準には、特に規定がありません。そこで、弊所では、一定の期間内に発行された特許分割出願の拒絶理由通知をサンプルとして統計調査を行いました。その結果、80通の第1回拒絶理由通知のうち、子出願の審査官と親出願の審査官とが同一であったのは13件でした。即ち、弊所が収集したサンプルのうち、審査官が代わっていない案件の割合は、約16%(=13/80)であったのに対して、審査官が代わった案件の割合は約84%でした。
また、中国知識産権局(SIPO)の関係者によると、現在、意匠の分割出願は全て、親出願の審査官が継続して審査しますが、特許及び実用新案の分割出願の場合、その他の出願と同様にSIPOのコンピュータシステムにより、技術の分野に応じてランダムに分配されます。ただし、分割出願が分配された審査官は、この分割出願を親出願の審査官にさし戻すことを請求することができます。親出願の審査官も通常、他の審査官から移管された分割出願を受け入れられます。しかし、これは、必ずしも従わなければならない規定ではありません。上記の弊所における統計結果からも分かるように、実務では、分割出願を親出願の審査官にさし戻さない審査官も多くいます。
一方、分割出願により審査官の変更を図る出願人にとって不利とも言える情報も入手しました。庁内制度の見直しに関与した審査官の話によると、審査効率の向上、審査一致性の確保を図るために、SIPOでは、分割出願を親出願の審査官にさし戻すことを規定する内部制度を検討しているところだそうです。
弊所としては、現時点で、審査官の変更を図るための方法として、分割出願はやはり有効な手段であると思います。SIPOの内部制度の変更については、弊所は引き続きウオッチングし、何か進捗がありましたら、直ちにご報告いたします。
(2014)