北京林達劉知識産権代理事務所
はじめに
社会の発展及び科学技術の進歩に伴い、科学技術は経済の発展において、ますます重要な役割を持つようになってきている。技術は、多くの企業にとって、生産力を向上させると同時に、多大な利益ももたらしている。そのため、技術は、もはや企業の競争力の中心的な原動力になっているといえる。
上記のような経済状況の下で、技術上の発明創造及びその活用方法は、すでに企業の最も重要な課題になっている。企業は、効率の向上、及び資源の節約のために、最大限の力を尽くすことで、自社の創造力を高めると同時に、積極的にその他の企業との技術的な協力及び取引を推し進めている。特に、技術譲渡は、市場における技術関連取引において、非常に大きな割合を占めている。そのうち、技術ライセンス契約が主な実施許諾方式になっている。
したがって、企業にとっては、法律により如何に技術ライセンス契約を締結・履行・管理するかが非常に重要なことになっている。本稿では、技術ライセンス契約の主な条項、及び技術契約の締結に関する注意事項について概略的に紹介する。少しでも参考になれば幸いである。
I. 特許ライセンス契約
特許ライセンス契約とは、特許権者、特許出願人又はその他権利者がライセンサーとして、ライセンシーに対して約定範囲内で関連特許の実施を許諾し、それに対して、約定したロイヤリティを支払わせるために締結した契約のことをいう。
ライセンサーは、他人に対して特許の実施を許諾することを通じて、早期に研究開発のコストを回収し、利益を得ることができる。しかも、ライセンサーは、ライセンスにより自分が優勢を占めていない地域及び分野に進入し、企業の影響力を拡大することができる。また、ライセンシーは、他人の特許を実施することを通じて、製造した製品を早期に市場投入できるので、研究開発能力の脆弱な企業にとって、他人の特許を実施することは、関連製品を市場に投入する近道であるといえる。特許ライセンス契約の締結・実施における理解・注意すべき事項について以下にその概要を紹介をする。
1. 種類
特許ライセンス契約は、独占的ライセンス、排他的ライセンス及び通常ライセンスという3種類に分けている。ライセンスの種類によりその使用範囲、ライセンシーの人数、及び訴権が異なっている。
(1)独占的ライセンス
独占的ライセンスの場合、特許権者は、一定の期間及び一定の地域内において、ライセンシーのみに対して当該特許技術の実施を許諾し、その他の者に対しては当該特許技術の実施を許諾しないと同時に、特許権者自身も当該特許技術を使用することができない。すなわち、ライセンシーは、一定の期間及び地域内において、当該特許技術の独占権を享有するので、通常、当該ライセンスについて、ライセンシーは、高額のロイヤリティを支払わなければならない。
(2) 排他的ライセンス
排他的ライセンスの場合、特許権者は、一定の期間及び一定の地域内において、ライセンシーに対して当該特許技術の実施を許諾し、第三者に対しては当該特許技術の実施を許諾しないものの、特許権者は当該特許技術を実施する権利を留保する。
(3) 通常ライセンス
通常ライセンスの場合、特許権者は、一定の期間及び一定の地域内において、ライセンシーに対して当該特許技術の実施を許諾し、自らも当該特許技術を実施する権利を留保すると同時に、第三者に対して当該特許技術の実施を許諾することもできる。当該ライセンスの場合は、市場で数社のライバルを形成するおそれがあるので、独占的ライセンスに比べ、そのロイヤリティは比較的安くなる。
ライセンスの種類により、各ライセンシーの訴権も相異する。中国の関連司法解釈によれば、特許権侵害事件が発生した場合、独占的ライセンス契約におけるライセンシーは、自ら裁判所に訴訟を提起することができる。排他的ライセンス契約におけるライセンシーは、特許権者が訴訟を提起しない場合、裁判所に訴訟を提起することができる。通常ライセンスにおけるライセンシーは、特許権者から権限を受け、裁判所に訴訟を提起することができる。
2. 主要条項
特許ライセンス契約の主な条項には以下の内容を含む。
(1)特許条項(ライセンス特許の名称、特許番号、出願番号、有効期限等)
(2)許諾の種類及び範囲
(3)技術書類の交付及び技術指導条項
(4)ロイヤリティ及びその支払方法
(5)改良技術の帰属
(6)瑕疵担保及び保証条項
(7)第三者権利侵害責任
(8)不可抗力条項
(9)準拠法及び紛争の解決
(10)違約金又は損害賠償の算出方法
(11)その他(たとえば、専門用語の定義、契約期間、文字及び署名、契約の添付資料等)
3. 注意事項
(1)契約の締結前における特許技術の権利態様の確認、及び特許技術の存続力の調査
契約の効力を保障するためには、契約を締結する前において、契約の双方当事者は、いずれも、ライセンサーが許諾権利を有するか否かを明らかにしなければならない。特に、ライセンサーが単独許諾権利を有しない場合は、事前にその他の共有者の同意を得なければならず、かつ、ライセンサーが単独許諾権利を有する関連書類を提出しなければならない。
また、契約の双方当事者は、いずれも、特許技術の存続力を明確に把握しなければならない。すなわち、当該特許について、比較的高い進歩性及び実用性を有するか否か、実施後に市場でどの程度の優勢を占めているか、特許の有効期限が後何年残っているか、誰かが当該特許に対して無効請求を提出したか否か、すでに外国への特許を出願したか否か、すでにライセンスしたか否かなどを確認しなければならない。かかる確認は、双方当事者が当該特許を正確に評価するのに役立つ。
(2)書面形式による契約の締結、及び正確な用語・言葉の使用
「契約法」第342条によれば、特許ライセンス契約は、書面形式により締結しなければならない。契約書の内容は、双方当事者間の権利及び義務関係を規制する根拠であり、かつ、実務上、契約用語の意味解釈のくい違いにより紛争が生じた事件も少なくない。したがって、契約を作成する場合、確定されて理解しやすく、争議を生じにくい用語を使用しなければならない。通常、簡単な言葉・文句は理解しやすく、法律規定、辞書に明確に定義されている専門用語は、その意味が確定されているので、争議が生じるおそれが少ない。
(3)秘密保持に係る条項の約定
通常、特許の実施には、当該特許以外の内容が必要であり、かかる内容はいずれもノウハウに該当する。ノウハウとは専有技術とも言うが、ある工業生産目標を実現するために、必ず守秘しなければならず、かつ、対外へ公開されていない技術知識でなければならない。ライセンシーは、必ずかかる内容を熟知しなくてはならず、仮に秘密保持に係る約定がない場合は、有効に当該情報の安全を保護できなくなる。したがって、特許をライセンスする場合、必ずノウハウを考慮しなければならず、かつ、関連ノウハウに係る秘密保持条項の約定に注意を払わなければならない。事実上、ノウハウについては、特許と共に混合ライセンスするだけではなく、単独でライセンスすることもできる。
また、その他に注意すべき事項は、契約の双方当事者が特許ライセンス過程で比較的密接に接触することにより必然的に相手方の経営、管理秘密を知ることができることに鑑み、同様に秘密保持条項を利用して適切な保護を与えるべきことである。
(4)契約に明確にすべき特許ライセンスの種類及び範囲
上記のとおり、特許ライセンスは、独占的ライセンス、排他的ライセンス、及び通常ライセンスに分けられる。双方当事者がどのライセンスを採用するかは、主にライセンスする技術状況、対価、市場等のさまざまな要素により決められる。特に注意すべきところは、「技術契約紛争事件の審理における適用法律の若干問題に関する最高裁の解釈」の第25条によれば、双方当事者がライセンスの類型について約定せず、又は約定が不明であった場合は、通常ライセンスと認定されてしまうことである。したがって、契約において上記の事項を明確に約定することが非常に重要である。
ライセンス範囲とは、主にライセンスする地域、期限の範囲のことをいう。また、契約にはライセンシーがサブライセンスできるか否かについて明確に約定したほうがよい。
なお、企業は、ライセンス契約において、ライセンスの期限と地域範囲も明確に約定し、かつ、製造、使用、販売申し出、販売、輸入等についてもそのライセンス事項を明確に約定しなければならない。それと同時に、今後生じ得る紛争を避けるために、更にライセンシーがサブライセンスできるか否かについても明確に約定しなければならない。
(5)改良技術成果の帰属及び利用に対する明確な約定
「契約法」第354条によれば、双方当事者は、契約によって後続的に改良する技術成果の利益分配を約定することができる。約定がなかったり、約定が不明確なためその帰属を確定できなかったりする場合は、当該改良技術は、改良側に帰属し、相手方は利益分配を受ける権利を有しなくなる。したがって、今後、特許ライセンスによる改良を経て得られた技術成果を有効利用するために、双方当事者は、事前に権利帰属及び相手方の使用権限等を約定しなければならない。
(6)特許権の有効性に係る保証条項の明確な約定
保証条項には、具体的に、権利保証と技術保証という2種類が含まれる。権利保証とは、ライセンサーがライセンス権利を有することを保証し、かつ、許諾期限内における関連特許権の有効性を保証することをいう。技術保証とは、ライセンサーが自己の提供する特許の安全・実用であり、予期の技術目標に達成できることを保証することをいう。
「契約法」第344条によれば、特許ライセンス契約は、当該特許権の存続期間内のみ有効である。したがって、特許権者は、特許権が付与された当年から年金を納付しなければならず、規定に違反して年金を納付しなかった場合は、特許権は存続期限の満了前に中止されてしまう。なお、仮に特許権者が期限通りに年金を納付したとしても、契約の目的物としての特許権には依然として不安定性が存在し、特に、実用新案権及び意匠権の場合は、その審査段階に実体審査が行われないので、各権利の無効審判手続きにおいて、無効になったり、又はその権利範囲が縮小したりすることがある。したがって、契約の紛争を避けるために、当事者は、契約において特許の有効性の存続及び権利無効になってからの処理方法を約定しなければならない。
(7)ロイヤリティの算出方法に係る明確な約定
ロイヤリティの算出については、一括計算と一括支払、又は一括計算と分割支払という方式を採用できる。また、歩合の支払又は前渡金付歩合支払方式も採用できる。歩合支払方法を採用した場合は、ライセンサーがライセンシーの特許製品販売に係る帳簿を調査・閲読できる権利を有するとの事項を約定しなければならない。しかし、多くの中国企業の財務制度はまだ規範化されていないので、公開帳簿、内部帳簿等という種々雑多な帳簿があり、かつ、インボイスを発行しない場合も非常に多いので、真偽を見分けにくい。したがって、利益歩合の支払は、ライセンサーとって最も大きなリスクであり、販売高歩合の支払はその次となっている。
(8)権利侵害の処理方法に係る明確な約定
特許ライセンス契約の履行において、第三者から、ライセンシーが実施する特許について自己の権利を侵害したとの理由で訴えられる可能性がある。また、第三者が特許ライセンス契約における特許権を侵害する情状が生じる可能性もある。したがって、権利侵害を制止するための費用、及び得られる賠償について、ライセンサーとライセンシーの間でどのように分担するかを約定しなければならない。特に、第三者に対する権利侵害の責任については、「契約法」第353条に基づき、当事者の間で別途約定を有する場合を除き、ライセンシーが約定に基づき特許を実施をしたことが他人の合法的な権益を侵害した場合は、ライセンサーが当該責任を負うものとされている。そのため、当該情状を考慮して事前に約定し、責任を分担することは、ライセンサーにとって極めて重要なことである。
(9)特許ライセンス契約における「無効条項」の回避
「契約法第」329条によれば、「技術の違法独占、技術進歩の妨害」に該当する契約は無効であり、「技術契約紛争事件の審理における適用法律の若干問題に関する最高裁の解釈」第10条によると、次に掲げる情状が「技術を違法独占し、技術進歩を妨害する」契約に該当するので、契約の締結時にはそれを回避するために意を払わなければならない。
①当事者の一方が契約目的の技術に基づいて新たな研究開発を行うことを制限し、又は改良された技術の使用を制限し、又は、双方の改良技術交換の条件が不平等である場合
これには一方が自ら改良した技術を他方に無償で提供することを要求すること、相互利益とならない技術譲渡、及び当該改良技術の知的財産権を無償で独占又は共有することが含まれる。
②当事者の一方がその他の出所から技術供与側に類似した技術又はそれと競争関係にある技術の取得を制限する場合
③当事者の一方が市場のニーズに基づき、合理的な方法によって契約の目的である技術を十分に実施することを妨げる場合
これには受け入れ側が契約の目的となっている技術を実施して生産する製品又は提供するサービスの数量、種類、価格、販売ルート及び輸出先を明らかに不合理に制限することが含まれる。
④受け入れ側に、技術の実施に不可欠ではない付帯条件を受け入れるよう要求する場合
これには必要ではない技術、原材料、製品、設備、サービスの購入及び不必要な人員の受入等が含まれる。
⑤技術受け入れ側の原材料、部品、製品又は設備等の購入ルート又は購入先を不合理に制限する場合
⑥技術の受け入れ側が契約の目的である技術の知的財産権の有効性に対する異議申立を禁止する又は異議申立に条件を付ける場合
(10)特許ライセンス契約の国務院特許行政部門への届出
「特許法実施細則」第14条によれば、当事者(特許権者)は、特許実施許諾契約が発行した日から起算して3ヶ月以内に届出手続を行わなければならない。届出は、契約の必須要件でないものの、届出されたライセンス契約は第三者に対抗することができる。また、かかる届出書類は、ライセンシーが訴訟を提起し、又は行政摘発を請求した場合、ライセンシーの身分を証明する有力な証拠になる。しかも、届出されたライセンス契約における許諾範囲、ロイヤリティなどは、裁判所、特許行政部門が損害賠償額を確定し、又は調停を行う際の参考要素になる。
II. 専有技術ライセンス契約
特許ライセンス契約と専有技術ライセンス契約を比べると、その最大の違いは、専有技術ライセンス契約において、ライセンサーがライセンシーに対して許諾した技術は、公開されている技術ではなく、ライセンサーに帰属した未だ公開されていないノウハウであるという点にある。専有技術は、所有者に属する一つの資産として、所有者の秘密保持措置により形成された事実上の専有権を前提とする事実上の独占的な財産である。
上記のとおり、通常、専有技術は、ある特許製品を製造し、又は特許製造方法を実施するために必要なコア技術であるので、特許との混同ライセンスができるだけではなく、単独で許諾されることもある。したがって、専有技術ライセンス契約の類型、主要条項、及び当該契約の締結と管理時の注意事項は、特許ライセンス契約と大同小異であるといえる。以下に相違点について簡単に説明する。
1. 契約の主要条項とする専有技術の内容及び範囲の明確な約定
専有技術は、特許と比べると、未公開の状態にあるので、当該専有技術の内包及び外延について、当事者間の約定により限定しなければならない。したがって、契約の双方当事者は、実施許諾技術内容に対する双方間の理解の相違による紛争を避けるために、双方当事者は、正確な言葉により許諾するノウハウの範囲を明確にしなければならない。
また、専有技術は、特許と比べると、ひと目見ただけで分かるものではないので、技術の有効性、実用性、特に達成できる技術目標等の技術効果については、より明確に約定しなければならない。
2. 専有技術ライセンスにおける秘密保持条項の重点的な約定
秘密性は、専有技術の特徴の一つである。仮に当該技術がライセンスにより漏洩された場合は、ライセンサーにとって「得」よりも「損」の方が大きくなる。したがって、ライセンシーの秘密保持義務及びその違約責任を逐一、明確、かつ詳細に約定しなければならない。それと同時に、ライセンサーは、相手方の注意を促すために、技術資料を提供する際に秘密保持に係る資料については、いずれも秘密標識を明示しなければならない。
しかも、ライセンサーが提供した専有技術により生じる改良技術について、当該技術の権利帰属及び相手方の使用期限を約定し、かつ、改良技術に対する秘密保持義務の約定にも注意を払わなければならない。これは、仮に改良技術が公開された場合、元ノウハウも当然公開されてしまい、ライセンサーにとって極めて大きな不利益が生じてしまうからである。
III. 技術輸出入時に係る注意事項
特許ライセンス又は専有技術ライセンスであるにもかかわらず、当該技術ライセンスが中国企業と外国企業の間で行った許諾に該当した場合は、中国「技術輸出入管理条例」の規制を受けるので、契約の双方当事者は以下の事項に注意を払わなければならない。
1. ライセンス技術の輸出入規制技術又は禁止技術か否かの事前確認
輸出入禁止技術について、当事者はライセンス契約を締結することができない。輸出入制限技術について、当事者は関連許可証を取得しなければならない。したがって、契約の当事者は、事前に実施許諾技術が輸出入規制技術又は輸出入禁止技術に該当するか否かを確定しなければならない。この際には、国務院対外経済貿易(商務部)主管部門と国務院関連部門が共同で制定・公布した「輸入禁止又は規制技術目録」を参照することができる。
2. 実施許諾技術が他人の権利を侵害するか否かに対するライセンサーの事前調査
「技術輸出入管理条例」の第24条には、「技術輸入契約の譲渡人は、自己の提供した技術の合法的な所有者であること、又は移転・許諾の権利を有する者であることを保証しなければならない。技術輸入契約の譲受人は、譲渡人から提供された技術を契約の約定に基づいて使用するものとし、第三者により権利侵害を訴えられた場合、譲受人は直ちに譲渡人に通知しなければならない。通知を受け取った譲渡人は、譲受人が妨害を排除することに協力しなければならない。技術輸入契約の譲受人が譲渡人から提供された技術を契約の約定に基づいて使用し、他人の合法的な権利を侵害した際には、譲渡人がその責任を負うものとする。」と規定されている。
上記の規定に基づき、技術輸出入に係る技術ライセンスにおいて、ライセンサーは、第三者に対する権利侵害の全部の責任を負い、かつ、ライセンシーとの責任分担を約定することができない。したがって、ライセンサーは、今後の訴訟の提起を回避するために、事前に慎重な調査を行わなければならない。
3. 改良技術に対する使用権の約定
「技術輸出入管理条例」の第27条には、「技術輸入契約の有効期間内に改良した技術は改良側に帰属する。」と規定している。上記の規定に基づき、技術輸出入に係る技術ライセンスにおいて、改良技術の成果は改良側に帰属し、当事者の間では当該技術の権利帰属を約定することができない。改良技術に対する双方当事者の合法的な使用権を保証するために、当事者の間では事前に改良技術の無償使用権等の事項を約定したほうがよい。
4. 「技術輸出入管理条例」第29条規定に基づく契約締結時の注意点
「技術輸出入管理条例」第29条規定に基づき、契約の締結時には、次に掲げる内容を含んではならない。
①譲受人に対して不必要な技術、原材料、製品、設備又はサービスの購入などの技術輸入に不可欠でない付帯条件を受け入れるよう求めること。
②譲受人に対して特許権の有効期間が満了し、又は特許権が無効になった技術の使用料を支払い、又は関連の義務を負うよう求めること。
③譲受人が譲渡人から提供された技術を改良することを規制し、又は譲受人が改良された技術を使用することを規制すること。
④譲受人が、譲渡人から提供された技術と類似する技術又はそれと競合する技術をその他の供給源から取得することを規制すること。
⑤譲受人が原材料、部分品、製品又は設備を購入するルート又は供給源を不当に規制すること。
⑥譲受人の製品の生産量、種類又は販売価格を不当に規制すること。
⑦譲受人が輸入技術を利用して生産した製品の輸出ルートを不当に規制すること。
5. 技術輸出入に係る技術ライセンス契約の国務院対外貿易委員会主管部門への届出
技術輸出入に係る技術ライセンス契約について、「技術輸出入管理条例」及び「技術輸出入契約登録管理弁法」の関連規定に基づき、当該契約は、国務院対外貿易委員会主管部門に届出しなければならない。特に、外国企業が中国企業に対してライセンスする場合は、なおさら関連届出手続を行わなければならない。その原因は、届出手続を行わなかった場合、ロイヤリティーを送金することができないためである。
おわりに
技術ライセンス契約は、特殊な契約であり、特許又はノウハウの特殊性(独占性、地域性、行政性、無体性等)の問題が生じるだけではなく、民事契約の共通性(一般契約紛争の問題が同様に技術ライセンス契約によって生じる可能性もある)も有する。したがって、技術ライセンス契約を締結する際には、慎重・厳格に行わなければならず、当該技術効果に対する技術専門家の査定だけではなく、特許訴訟及び契約訴訟に精通した弁護士の指導も欠かせない。
弊所は、技術ライセンス契約の作成、チェック、及び届出に係る業務を数多く取り扱っている。本稿は、法律規定に基づき、かつ、弊所の経験を合わせて、技術ライセンス契約の内容、構成、注意事項を概略的にまとめたものである。少しでも参考になれば幸いである。
技術ライセンス契約の締結を必要とする方々に対して、弊所は、これまでの経験を活かした法律及び技術に関する意見を喜んで提供する。また、何か質問又は要望があれば、いつでも連絡いただきたい。
(2013)