中国における優先権書類デジタルアクセスサービス(DAS)について
中国国家知識産権局(SIPO)では、世界知的所有権機関(WIPO)との協議に基づき、出願人の優先権書類提出の便宜を図り、審査の効率を向上させるために、
2012年3月1日よりデジタルアクセスサービス(Digital Access Service、以下「DAS」という)が利用可能となりました。
中国へ出願する際、どのようにDASを利用するのかについて、以下の観点から簡単に紹介いたします。
I.中国におけるDASの概要
DASとは、WIPO国際事務局により構築・管理され、各国特許庁との協力に基づく電子的交換による優先権書類を入手可能なデジタルアクセスサービスのことです。
中国以外のDASの参加国(例えば、日本特許庁)における第一国出願を優先権主張の基礎として、中国へ出願する際に、第一国出願の出願人がWIPOのDASを利用して優先権書類データを取得するようにSIPOに請求することができます。SIPOがDASを利用して優先権書類を取得することは、出願人による中国特許法第30条の規定に基づく優先権書類の提出と見なされます。
つまり、出願人は、DASを利用しても、紙ベースによる優先権書類の提出という従来の方法を利用してもよいということです。
II.中国におけるDASを利用した優先権書類の提出方法について
第1ステップ:出願人は、取得請求すべき優先権書類を第一国出願の受理官庁(例えば、日本特許庁)によりDASへ提供します。
第2ステップ:出願人は、WIPO国際事務局のウェブサイトへアクセスし、WIPOが管理する「アクセス管理リスト」において優先権書類の取得を許可する国の特許庁として、中国国家知識産権局を設定します。
第3ステップ:出願人は弊所に新規出願を依頼する際に、当該出願に係る優先権書類をDASへ提供して中国国家知識産権局に取得の許可を与えたことを説明し、DASを通じて優先権書類を提出する旨を弊所に指示するとともに、下記の情報を提供する必要があります。
(1)先願の受理官庁
(2)先願の出願番号
(3)先願の出願日
(4)先願の出願人
(5)先願の発明者
第4ステップ:弊所は、新規出願を提出する際に、又は出願日から3ヶ月以内に、DASを利用して優先権書類データを取得するようにSIPOに請求します。
III.中国でDASを利用する際の注意事項について
1.適用対象及び条件
A. 出願日が2012年3月1日及びその後に提出した外国優先権 (例えば、日本国優先権) を主張する
特許出願または
実用新案出願でなければなりません。現在、意匠出願については、DASの利用はできません。
B. 優先権の基礎となる出願がPCT国際出願である場合は、対象外です。
C. 優先権主張の基礎となる出願の受理官庁はDASの提供庁でなければなりません。
現在、DASの参加庁は、オーストラリア、スペイン、フィンランド、英国、米国、WIPO、日本、韓国、中国、スウェーデン、デンマークが挙げられます。そのうち、スウェーデン、デンマークは提供庁のみです。
2.DASを利用する場合に必要な事前準備
中国の現地代理事務所が中国特許庁へDASを請求するに際して、出願人側は、以下の事前準備を完了させることが必要です。
対象出願(優先権主張の基礎出願)について、その受理庁(例えば、日本特許庁)へアクセスコードの付与を請求したうえ、WIPOのDASウェブサイトで中国特許庁を優先権書類の取得を許可する国の特許庁(取得庁)として設定を行います。
さもなければ、SIPOは優先権書類データを入手できない可能性があります。
3.先願の出願人と中国の出願人が不一致の場合
先願の出願人と中国の出願人は一致しておらず、例えば、後願のある出願人または出願人の一部が先願の出願人でない場合、出願人は中国特許法の規定に従って優先権譲渡証明書を提出する必要があります。
4.DASによる優先権書類の提出期限
DASを利用して優先権書類を提出する期限は、紙ベースによる提出の期限とは同一であり、いずれも出願日から3ヶ月以内です。
5.DASの取得請求が失敗した場合
DASを利用して優先権データを取得するのが失敗した場合、「優先権書類の入手可能な証明書(CERTIFICATE OF AVAILABILITY OF A CERTIFIED PATENT DOCUMENT IN A DIGITAL LIBRARY)」を提出する必要があります。それは、WIPOのウェブサイトから優先権書類の入手可能を証明するためのものです。
IV. 関連資料
http://www.sipo.gov.cn/pdoc/das/
SIPOのウェブサイトに掲載するDASについての紹介 (中国語)