中国国家知識産権局(SIPO)への特許審査ハイウェイ(PPH) 申請に対してよくある質問について
北京林達劉知識産権代理事務所
2011年11月1日より、日中間の特許審査ハイウェイ(PPH)試行プログラムが正式に開始されました。ご参考までに、SIPOへPPH申請する際によくされる質問について、以下の通りまとめました。
1. PPH申請は日本で登録された特許請求の範囲に基づいて行わなければならないか?
PPH申請は、日本特許庁(JPO)の日本国出願の国内段階審査結果、又はPCT国際段階成果物に基づいて行うことができます。
日本国出願の国内段階審査結果を利用する場合、対応する日本出願が存在し、すでに特許可能と判断された一又は複数の請求項を有するという要件を満たさなければなりません。請求項は、出願が特許査定となっていなくても、最新のオフィスアクションにおいてJPOの審査官が明確に当該請求項を特許可能であると特定した時に「特許可能と判断された」ことになります。
PCT国際段階成果物を利用する場合、当該出願に対応する国際出願の国際段階における成果物、すなわち国際調査機関が作成した見解書(WO/ISA)、国際予備審査機関が作成した見解書(WO/IPEA)及び国際予備審査報告(IPER)のうち、最新に発行されたものにおいて特許性(新規性・進歩性・産業上利用可能性のいずれも)「有り」と示された請求項が少なくとも1つ存在するという要件を満たさなければなりません。ただし、国際調査報告(ISR)のみに基づいてPCT-PPHを申請することができません。
2. PPH申請の時期は?
PPH申請する際に、当該SIPO出願は次の要件を満たさなければなりません。
(1)PPHの申請以前に当該SIPO出願が公開されていること。
(2)当該出願が実体審査段階に移行していること。
(3)当該出願に関しSIPOにおいて、PPH申請時に審査の着手がされていないこと、つまりいかなる拒絶理由通知も発行されていないこと。
したがって、PPH申請要件を満たす出願について、実体審査の請求と同時に、或いはSIPOから当該出願の実体審査移行の通知を受領後、できるだけ早めにPPT申請をすることができます。
3. PPH申請にどのような書類が必要となり、どのような要件があるか?
(1)「特許審査ハイウェイ試行プログラムへの参加の申請」
(2)対応する日本出願に対してJPOから出されたすべてのオフィスアクションの写し、及びその中国語又は英語によるその翻訳文。
PCT-PPHを利用する場合、特許性有りとの判断が記載された最新国際成果物の写しと中国語又は英語によるその翻訳文を提出しなければなりません。
注意:その翻訳文は、一つの言語に統一しなければならない。つまり、オフィスアクション/国際成果物を複数提出する場合、全部中国語或いは英語のどちらかの言語に翻訳しなければならず、中国語による翻訳文と英語による翻訳文を混ぜてはいけません。
(3)対応する出願の特許可能と判断されたすべての請求項の写し、及びその翻訳文。
注意:上記3.(2)、3.(3)に言及された翻訳文について、精確な翻訳が要求されておらず、審査官が理解することができれば問題ありません。
(4)対応する出願を評価するために引用された引用文献の写し。
参考文献として引用されただけで、拒絶理由を構成しない書類については、提出の必要はありません。
引用文献が特許文献であれば、提出を省略できます。また、非特許文献は、提出を省略することができません。引用文献の翻訳文は提出不要です。
(5)当該SIPO出願のすべての請求項と、特許可能と判断された請求項とが十分に対応していることを示す請求項対応表。
4. PPH申請を補正することができるか?
PPH申請について自発補正する機会がありません。
PPH申請が上記の要件のすべてを満たしていない場合には、出願人はその旨及びその不備について通知されます。出願人は、特定の不備につき、一度だけ補正の機会を与えられ、上記特定の不備とは次の2つの場合に限られています。
①翻訳文を理解することができない場合。
②SIPOがある引用文献を入手できない場合。
補正後も要件を満たしていない場合には、出願人はその旨について通知され、一度だけ申請の再提出の機会が与えられます。再提出した申請も認められない場合には、当該出願は通常の順番で審査されることが出願人に通知されます。
5. PPH申請が認められた場合、対応するSIPO出願は直接特許査定、又は早期審査されるか?
SIPOがPPH申請を認めた場合、当該出願はPPHに基づく早期審査の対象案件として特別な地位が与えられます。当該出願は優先的に審査されて拒絶理由通知書などが出されます。ただし、SIPOは中国特許法の規定に基づいて審査し、当該出願を直接特許査定するというわけではありません。
6. PPH申請が認められた場合、請求項を補正することができるか?
PPH申請が承認された後に、請求項を補正することができます。補正又は追加された請求項は、対応する出願において特許可能と判断された請求項と十分に対応している必要はありません。ただし、クレーム対応要件を満たさない補正の扱いは、審査官の裁量に依存します。
7. 通常のルートによる出願に比べてPPH申請のメリットは?
PPH申請が承認された後、早期審査の対象案件として特別に取り扱われます。一般的には、通常のルートによる出願より、少なくとも6ヶ月早くSIPOから拒絶理由通知書を受領することができます。また、その拒絶理由通知書への意見書も優先して審査されます。
(2011)