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方法クレームのステップ順序による権利範囲への影響について


北京林達劉知識産権代理事務所
中国弁理士 張文慧
 
中国特許審査基準には、方法クレームは通常、技術プロセス、操作条件、工程又はステップなどの技術的特徴で記載しなければならないと定められている。しかし、方法クレームの工程又はステップの先後の実施順序の記載については、審査基準に具体的な規定はない。そのため、権利化・無効審判、権利行使において、方法クレームの各工程の実施順序に関して異なる解釈が生じることが多い。

方法クレームに工程の先後の順序が明記されている場合、中国特許法第64条の「発明又は実用新案特許権の権利範囲は、その請求項の内容によるものとし、明細書及び図面は請求項の内容の解釈に用いることができる。」という規定により、明記されているこの工程の実施順序は当該方法クレームの権利範囲への限定となると解されるべきである。一方、方法クレームに、当該方法クレームに含まれる複数の工程について、実施順序が明記されておらず、工程のみが記載されている場合、この工程の記載順序は実施順序を表していると考えてもよいか、という疑問が生じる。

そこで、本稿はこの点について以下の通り検討する。

「特許権紛争事件の審理における法律適用の若干の問題に関する最高裁判所の解釈(二)」の第11条には、「方法クレームに技術的な工程の先後の順序が明記されていなくても、当業者が請求の範囲、明細書及び図面を読んで、この技術的な工程を特定の順序で実施すべきであると判断する場合、裁判所は、この工程の順序が特許権の権利範囲への限定となると認定しなければならない。」と定められている。

この司法解釈によれば、方法クレームに工程の先後順序が明記されていない場合、明細書に課題の解決及び技術的効果の達成が特定の工程順序に依存する旨が明確に説明されていれば、明細書の記載に基づき、方法クレームの工程の順序が特許権の権利範囲への限定となると認定すべきである。

要するに、方法クレームの工程の順序が権利範囲への限定となるか否かに関する判断において、これらの工程を特定の順序で実施しなければならないか、順序の入れ替えによって機能または効果上の本質的な相違が生じるかという2点が重要である。方法クレームにおける工程の順序の入れ替えによって機能または効果上の変化が生じない場合、この工程の順序は権利範囲への限定にならない。

(2018)桂民終720号二審民事判決は上記司法解釈を適用した判例である。

係争特許のクレーム1は、記憶媒体のファームウェアに関するステップ(構成1)と、記憶媒体の内部データ編成モードに関するステップ(構成2)と、情報交換チャネルを確立するステップ(構成3)と、動作電源の導入方法に関するステップ(構成4)と、ホストと記憶装置との間の情報交換の標準方法のステップ(構成5)とを含むフラッシュメモリ式外部記憶方法であるが、ステップの実施順序は明記していない。

上記構成の内容からすれば、各ステップはそれぞれ異なる観点からクレーム1の方法を限定している。当業者はクレーム、明細書及び図面を読んでも、上記ステップは特定の順序で実施すべきであるとは認識しない。また、各ステップの実施による機能または効果からしても、各ステップの実施に唯一の先後順序の対応性があるとはいえず、各ステップの実施順序を調整しても機能または効果上の本質的な相違が生じることはない。よって、クレーム1のステップの順序は権利範囲への限定にならないと判断された。
 
まとめ

方法クレームに技術的な工程の先後の順序が明記されていない場合、これらの工程に関する明細書及び図面の記載は方法クレームの権利解釈に非常に重要である。よって、方法クレーム及び実施例の作成において、権利化したい発明を適切に反映するとともに、工程の実施順序によって権利範囲が狭く解釈されることがないように留意すべきである。
 


ホットリンク:北京魏啓学法律事務所
©2008-2025 By Linda Liu & Partners, All Rights Reserved.
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