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商標出願において先行商標による抵触を回避する対応策


北京林達劉知識産権代理事務所
中国商標弁理士 郜 宇 
 
商標出願は、往々にして商標局に拒絶査定されたり、部分的に拒絶されたりすることがある。その理由としては、主に社会的に悪影響があったり、識別力が欠如したりするなどの絶対的な理由、及び、出願商標と先行出願又は登録商標とが、類似商品又は役務における類似商標に該当するという相対的な理由がある。そのうち、先行商標の存在によって拒絶査定される相対的な理由は、最もよく見られるものである。しかし、商標出願が商標局に拒絶査定されても、全く救済措置がないというわけではない。『商標法』の規定によれば、出願人は商標局の拒絶査定に不服がある場合、「拒絶査定通知書」を受領した日から15日以内に、商標審判委員会に不服審判を請求することができる。商標新規出願の段階と異なり、不服審判請求の段階では、請求人は自己の理由を十分に主張し、かつ関連証拠を提出することができる。実務において、当初商標局に拒絶された多くの商標は、不服審判請求を通して、最終的に登録が許可されている。したがって、商標登録出願が早めに初歩査定され公告されるように、出願人に対して、商標局の拒絶理由を真剣に検討した上、不服審判を請求し、かつ先行商標による抵触を回避する対応策を取ることを提案する。本稿では、引用商標による登録障害の克服について、以下のような方法をご紹介する。
 
1.商標の状態に対する確認

先行商標に関わる相対的な拒絶理由に対して、拒絶通知書を受領してから、「拒絶査定通知書」に記載されている引用商標の状態、指定商品の類否などの引用商標の情報を確認しなければならない。引用商標の状態について、まず、中国商標網における引用商標の状態に関する情報と突き合わせる必要がある。国際登録商標に対しては、加えて、世界知的所有権機関(WIPO)の公式サイトにおけるオンラインデータベースを確認する必要がある。引用商標が既に無効となり、又は抵触する商品と役務において一部無効となった場合、不服審判請求において引用商標の無効情報を提出することで、拒絶理由を容易に克服することができる。また、出願人は、『類似商品及び役務区分表』を参考にして、引用商標の指定商品又は役務と出願商標の指定商品又は役務とが、類似するか否かについて、確認すべきである。出願商標の指定商品又は役務と類似しない場合、不服審判請求において指定商品又は役務が類似しないことを主張して、争うことができる。
 
2.出願商標と引用商標との類似程度の比較

審査官は、主に商標局によって編纂された『商標審査基準』を参考にして、商標の類否判断をする。したがって、出願人は「拒絶査定通知書」を受領したら、『商標審査基準』に基づき、審査官が出願商標を拒絶査定した法的根拠及び具体的な理由を総合的に分析して、判断する必要がある。また、出願商標と引用商標との類否判断が『商標審査基準』に記載されている具体的な内容と一致しているかどうか、例外状況があるかどうかについて判断することが必要である。例えば、頭文字の字形、意味や全体的な外観における明らかな差異などの例外状況がある場合、かかる部分の差異を主張し、辞書における解釈などの証拠を提出すれば、争う余地は十分ある。
 
3.引用商標に対する異議申立、無効宣告審判、取消不服審判の提出

引用商標が出願商標を悪意で先取り出願した状況にある場合、まだ引用商標が登録許可されていない場合、初歩査定され公告されてから、『商標法』第33条に基づき、商標局に引用商標に対して、異議申立をすることができる。
 
引用商標が既に登録され、又は不正に登録された場合、出願人は、『商標法』第44条又は第45条に基づき、商標審判委員会に引用商標の無効宣告を請求することができる。引用商標の登録が最終的に許可されず、又は無効になった場合、出願商標の登録障害を解消することができる。
 
また、中国には現在、登録後使用されていない登録商標が多数ある。多くの引用商標権者は引用商標を実際に使用しておらず、又は、多くの商標権者はすでに実際には存在していない。これらの登録商標について、『商標法』第49条の規定に基づき、継続して3年間使用していないことを理由に、その取消審判(以下は、「3年不使用取消審判」と言う)を請求することができる。したがって、先行商標による障害を解消するために、3年不使用取消審判の請求は、常用される手段の一つである。出願人は「拒絶査定通知書」の受領後、引用商標の登録期間が3年間に達しているかどうかを確認する必要がある。判断する際、異議申立又は異議不服審判を経て登録が許可された先行登録商標については、その登録公告日から起算して3年に、国際登録商標に対しては、18ヶ月の審査期間が満了してから起算して3年達しているか否かに留意しなければならない。もし、引用商標の登録が確かに満3年に達している場合、実地調査やインターネット調査などを通して、引用商標の実際の使用状況を調査すべきである。調査によって、引用商標の使用が確認されない場合、引用商標に対して3年不使用取消審判を請求できる。その結果、引用商標が最終的に取り消されたら、出願商標の登録障害が解消される。 
 
4.同意書やコンセントの提出

商標審判請求の実務において、出願商標と引用商標とが、商標自体又は指定商品若しくは役務がある程度異なる場合、請求人は引用商標権者と協議して、かつ商標の出願登録と使用に同意する「商標同意書」を発行し、又は、出願商標と引用商標との並存に同意する「商標コンセント」に署名することが考えられる。双方の協議を通して、引用商標権者が「商標同意書」の発行、又は「商標コンセント」への署名に同意する場合、その「商標同意書」や「商標コンセント」は、出願商標が登録を許可される証拠として、商標審判委員会に認められる。したがって、拒絶理由を克服する手段の一つとして、請求人が引用商標権者と協議して、「商標同意書」を発行するか、又は「商標コンセント」へ署名してもらえるように交渉することが考えられる。「商標同意書」の発行、又は「商標コンセント」への署名の際には、次のことに留意することが必要である。
 
(1)協議前に、請求人は、出願商標を使用していなく、かつ、引用商標の商標権侵害を構成していないことを確認する必要がある。さもなければ、請求人が権利侵害で訴えられるリスクが高くなる。

(2)実務において、商標審判委員会によって「同意書」や「コンセント」に対する公証手続き(国内当事者の場合)、又は公証認証手続き(外国当事者の場合)を行うことを要求される。そのため、協議において、この点を引用商標権者に知らせる必要がある。
 
(3)「同意書」と「コンセント」において、出願商標の出願番号、出願日、指定商品及び引用商標の登録番号、登録日、指定商品などの出願商標と引用商標との関連情報を明確に記載することで、拒絶査定不服審判の勝率を向上させることができる。
 
5.商標譲渡についての協議

出願人は、引用商標権者と協議して、引用商標の譲渡について交渉することも考えられる。もし、引用商標権者が当該引用商標を請求人に譲渡することに同意する場合、双方当事者は、商標局に許可された場合、引用商標の抵触による障害を克服することができる。
 
上記3から5の対応策は通常、拒絶査定不服審判を請求した後に取るべき対応策である。改正『商標法』によれば、『商標審判委員会』は、9ヵ月から12ヵ月以内に不服審判請求の審決を下さなければならないと規定しているが、実際には、通常より早く審決が下される案件もある。しかし、上述の3年不使用取消審判請求、「同意書」に関する協議又は商標譲渡、及び異議申立又は無効宣告請求の場合、ある程度時間がかかることもあり、必ずしも期限内に確定できるわけではない。したがって、請求人が上記の対応策で引用商標の抵触による障害を克服しようと考える場合、商標不服審判請求において、関連証拠を審判官の参考として提出し、かつ不服審判の審理猶予を請求しなければならない。
 
(2015)

ホットリンク:北京魏啓学法律事務所
©2008-2025 By Linda Liu & Partners, All Rights Reserved.
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