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どのように商品の類似及び商標の類似を判断するか ——中国「商標の権利付与・権利確定に係わる行政案件の審理における若干問題に関する最高裁判所の意見」に体現していた政策動向につい


北京林達劉知識産権代理事務所
商標部
 
2001年商標法改正により、中国国家工商管理総局商標審判委員会の商標出願拒絶査定不服審判、異議申立不服審判、不正登録取消審判、不使用取消不服審判の審決は、最終的なものでなくなり、これらの行政審決も司法審理範囲に入ることになった。実務上、商標の権利付与・権利確定に係わる行政案件は、既に裁判所知的財産権裁判の重要な構成部分になっている。一部の有名商標案件の社会影響力により、それらの案件の社会関心も絶えずに高まっている。商標の権利付与・権利確定に係わる行政案件の審理において、商標類似及び商品類似に対する類否判断は、審理上の最も基本的、且つ最も重要な審理ポイントの一つである。

十年間の司法実践を経て、2010年4月に、中国最高裁判所は「商標の権利付与・権利確定に係わる行政案件の審理における若干問題に関する最高裁判所の意見」(法発[2010]第12号、以下は「意見」という)が公表され、商標標の権利付与・権利確定に係わる行政案件における商標の類似及び商品の類似を含める若干の司法審査基準について、新しい指導意見が提出された。本文は、「意見」における商標の類似及び商品の類似に関わる内容を解読し、またいくつかの「意見」の精神に基づいた実際の訴訟事例を提供することにより、商標出願人及び商標権者に、中国最高裁判所が制定した中国商標の権利付与・権利確定に係わる権利付与基準、またその中から取得てきる示唆又は参考経験を提供したい。

2002年に公布された「最高裁判所の商標民事紛争事件の審理における法律適用の若干の問題に関する解釈」(法釈[2002]第32号、以下は「解釈」という)の中には,「商品/役務類似」、「商標類似」について、比較的に明確な司法解釈を提供した。

「解釈」第9条2項の規定によれば、商標法第52条第1号に規定する商標の類似とは、侵害被疑商標と原告の登録商標を比べて、その文字の形、称呼、観念又は図形の構成及び色彩、又は各要素を組み合せた後の全体構成が類似であり、又はその立体形状、色彩の組合せが類似で、関連公衆に商品の出所を誤認させ、又はその出所について原告の登録商標の商品と特定の関係を有すると誤認させることをいう。

「解釈」第10条は、商標同一または類似の原則を提出した。

1.関連公衆の一般的な注意力を基準とする。

2.商標の全体を対比するほか、商標の主要部分の対比も行わなければならず、対比は対比する対象を隔離した状態で行わなければならない。

3.商標が類似か否かの判断には、保護を求める登録商標の顕著性及び著名度を考慮すべきである。

当該「解釈」第11条の規定によれば、商標法第52条第1号に規定する類似商品とは、機能、用途、生産部門、販売ルート、消費対象等の面において同一であり、又は関連公衆が特定の関係があると一般的に認識し、容易に混同を生じさせる商品をいう。類似の役務とは、役務の目的、内容、方式、対象等の面において同一であり、又は関連公衆が特定の関係があると一般的に認識し、容易に混同を生じさせる役務をいう。商品と役務の類似とは、商品と役務の間に特定の関係があり、関連公衆を容易に混同させる場合をいう。

「解釈」第12条の規定によれば、裁判所が商標法第52条第1号の規定に基づき、商品又は役務が類似か否かを認定するときは、関連公衆の商品又は役務に対する一般的な認識を基準として総合的に判断しなければならない。『商標登録のための商品及び役務の国際分類表』、『類似商品及び役務区分表』を、商品又は役務が類似であるか否かを判断する上での参考とすることができる。

「意見」第14条には、「商標の権利付与・権利確定行政案件の審理における商品の類似と商標の類似の判断に当たって、裁判所は『解釈』の関連規定を参照することができる」と明確に規定されている。よって、「解釈」は依然として商品の類似と商標の類似の判断に当たる基本基準である。

しかし、商標の権利付与・権利確定案件の複雑さにより、一部の情況には、更に「解釈」の意味を明らかにする必要がある。上述の「解釈」は、保護請求商標の顕著性と著名度を考慮したが、商標の類否判断は主に商標自身より判断すべきである。商標の使用商品の関連度を結合して判断すべきことを明確に指摘せず、不正冒認出願行為を有効に抑制するために、比較的に著名度と顕著性が高い先行商標に保護を与え、できるだけ商標標識の混同可能性をなくす視点から判断すべきことも強調しなかった。類似商品/役務の判断につき、『商標登録のための商品及び役務の国際分類表』、『類似商品及び役務区分表』を、商品又は役務が類似か否かを判断する上での参考としたが、唯一な基準ではない。しかし、「解釈」は機能、用途、生産部門、販売ルート、消費対象などの面における同一性を強調したため、類似商品に対する判断基準は比較的に厳しい。そのため、商標実務において、案件は、拒絶不服審判請求、商標異議不服審判請求、商標係争、訴訟などの段階に入ると、先行商標の顕著性、著名度、商標の使用状況、使用商品の関連性などの客観事実をどのように考慮し、不正冒認出願行為を有効に抑制し、ビジネス標識の混同可能性をできるだけなくすかと言うことは、新しい課題になっている。

実際に、2009年3月と4月には、中国最高裁判所は、既に二つの公文書を公表した。即ち、「徹底的に国家知識財産権戦略を実行する若干問題にに関する最高裁判所の意見」(法発[2009]第16号)、《目前の経済情勢における知的財産権裁判は全体の情勢に適合する若干問題にに関する最高裁判所の意見》(法発[2009]第23号)。中には、「商品類似」、「商標類似」のについて、「合理的に商標権範囲を確定する」の視点から具体的な指導意見を提出した。即ち、「商標の顕著性の高さ、著名度の高低などにより保護の強度と範囲を確定し、正確に商標権侵害認定における商品の類似、商標の類似及び誤認された場合の結果を認定する」。「商品の類似及び商標類似を認定する場合、保護を求める登録商標の顕著性及び市場著名度を考慮すべきである。顕著性または市場著名度が高い登録商標について、より幅広く、且つ強度が高い保護範囲を与える」。上述の二つの意見は、商標権侵害案件に関する意見であるが、商標の権利付与・権利確定の案件における「商品の類似」、「商標の類似」の判定について、積極的な指導意見がある。当該問題は、最高裁判所の今回の公布した「意見」においてより明確的、且つ全面的な解答があった。

2010年4月、最高裁判所は、商標出願拒絶査定不服審判、異議申立不服審判、不正登録取消審判、不使用取消不服審判など具体的な行政行為に対して提訴する商標の権利付与・権利確定に関る行政案件の審理経験を纏め、数回に亘る調査・研究を行い、且つ専門学者からの意見を幅広く聴取したうえに、「意見」を制定した。「意見」の第1条、15条及び16条から見れば、商標の類似及び商品/役務の類似の判断基準に関わる運用可能性がより一歩増強、拡大した。

「意見」第1条によれば、裁判所は商標の権利付与・権利確定行政案件を審理する際に、まだ使用に大量投入していない係争商標に対して、商標の類似と商品の類似など権利付与・権利確定の条件に対する審査判断及び、先行商業標識との衝突についての処理にあたって、法に従って商標の権利付与・権利確定の基準を適宜厳しく把握し、消費者と同業経営者の利益を十分に考慮し、不正冒認出願行為を有効に抑制し、比較的高い著名度と比較的強い顕著性をもつ他人の先行商標、企業の名称などの商業標識の権益に対する保護を重要視し、出来る限り商業標識混同の可能性をなくすように努めるべきである。使用期間が比較的長く、すでに高い市場名声が上げられ、関連公衆団体を形成している係争商標については、商標法における先行商業標識の権益の保護と市場秩序の維持との相互調和という立法の精神を正確に把握し、客観上関連公衆がすでに関連商業標識を識別できている市場の実際を十分に尊重し、すでに形成された安定した市場の秩序の維持を重視す。

「意見」第15条によれば、裁判所は、関連商品又はサービスが類似するかを審査判断する際に、商品の性能、用途、生産部門、販売ルート、消費者群などが同一か或は比較的大きい関連性を持っているか、サービスの目的、内容、方式、対象などが同一であるか或は比較的大きい関連性を持っているか、商品とサービスとの間に比較的大きい関連性を持っているか、関連公衆に、商品又はサービスが同一の主体により提供され、或はその提供者の間に特定の関係があることを連想させやすいものではないかなどを考慮しなければならない。「商標登録用商品と役務の国際分類表」、「類似商品と役務の区分表」を、商品或はサービスの類似を判断する際の参考とすることができる。

「意見」第16条によれば、裁判所は、商標が類似するか否かを認定する際に、商標標識の構成要素及びその全体の類似性を考慮するだけでなく、関連商標の顕著性と著名度、使用商品との関連度などの要因も考慮しなければならない。混同を生じさせやすいか否かを判断の基準とするべきである。

「解釈」と「意見」の関連規定を対比してみれば、類似商品/役務の判断について、「意見」は商品の性能、用途、生産部門、販売ルート、消費者群などの同一かどうかの基準を保留する同時に、「比較的大きい関連性を持っているか」の概念を導入した。商標類似判断について、「意見」は商標類否判断する際、「解釈」に提出した三原則を考慮する同時に、商標は使用した商品との関連度などの要素も考慮すべく、更に他人の比較的に高い著名度と強い顕著性がある先行商標、企業名称などの商標標識の権益の保護も重要視されるべきである。これで、司法機関は商標の権利付与・権利確定に関るを審査する際、商標の類似と商品/役務の類否判断基準の把握について、もっと運用可能を有するようになった。

最高裁判所知的財産廷廷長である孔祥俊裁判官などの権威者の「意見」に対する理解及び使用の分析において、上述第1条は、初に商標の権利付与・権利確定に関る行政案件における法律適用の包括性の司法動向、即ち、裁判所は係争商標の実際使用状況を審査する際の判断要素として考慮し、且つ違う取り扱いをすべきことを明確した。まだ使用に大量投入していない係争商標に対して、法に従って商標の権利付与・権利確定の基準を適当に厳しく把握し、消費者と同業経営者の利益を十分に考慮し、登録してもしなくてもよいものはその登録を認めるべきではない。ただ乗りや冒認出願などの不正行為を防止し、ブランド経済の樹立に対してより大きな法律空間を与え、比較的高い著名度と比較的強い顕著性をもつ他人の先行商標、企業の名称などの商業標識の権益に対する保護を重要視し、出来る限り商業標識混同の可能性をなくすように努めるべきである。使用期間が比較的長く、すでに高い市場名声が上げられ、関連公衆団体を形成している係争商標については、裁判所は、客観上関連公衆がすでに関連ビジネス標識を識別できている市場の実際を十分に尊重し、すでに形成された安定した市場の秩序の維持を重視すべきである。

上述の規定から見れば、「意見」の精神に基づき、裁判所は商標の権利付与・権利確定に関わる案件の審理における商標の類否判断につき、引証商標(先行商標)の顕著性と著名度を考慮し、係争商標の顕著性と著名度、及び当該商標はすでに使用に投入しているかどうか、使用の範囲などを考慮すべきである。実際には、一部の係争商標はまだ使用に大量投入していないが、一部はすでにビジネス使用に大量投入している。関連公衆は、これらの著名度と影響力が異なる商標に対して、認知度はある程度異なる。商標はまだ使用に投入していなければ、消費者は当該商標を認知していないことを意味する。この場合、当該商標もまだ商品又は役務の出所を識別する商品の本質作用を発揮していない。実務上、ただ乗りや冒認出願などの不正登録行為が少なくないため、この種類の商標について、権利付与・権利確定の基準を適宜に厳しく把握すれば、根源からビジネス標識混同の可能性をなくし、先行商標への公平をも実現できる。
 
商標の類似に関わる行政訴訟事件の紹介及び分析

実際の行政訴訟事件において、各級の裁判所は、どのように上述の「意見」の精神を貫徹しているのか。商標の著名度及び使用上は本当に商標の類否判断に影響を与えるのか。下記事件から、「意見」は具体的な案件中における執行と範囲を見てみる。

事件一:

事件紹介

1案件名:

商標字(2008)第31840号「第2012830号「HONYO”」商標異議申立不服審判審決」に関する行政訴訟事件

2事件の争点:

第2012830号商標「HONYO」は第156865号引証商標「HONDA」とは類似商品おける類似商標を構成するか否か。

3事件の基本状況:

一審事件番号:北京市第一中等裁判所(2010)一中知財初字第1551号行政判決書

原告:本田技研工業株式会社

被告:中華人民共和国国家工業行政管理局総局商標審判委員会

第三者:増城市東陽摩托車実業有限公司

判決日:2010年7月31日

関連法律条文:「商標法」第28 条

4事件の概要

2001年10月16日、第三者の増城市東陽摩托車実業有限公司は、被異議申立商標「」を出願し、第12類の1203、1208類似群の関連商品を指定した。具体的商品は「オートバイ、オートバイエンジン、オートバイタイヤ」などを含む。

1979年4月19日、原告の本田技研工業株式会社は、第12類の1201-1207、1209-1210において引用商標「」を出願した。その登録が許可された後、更新を経て、存続期間は2012年4月29日までである。指定商品は「車両、乗用車、オートバイ、自動車用減振動、自動車用ダンバー」などである。

原告は法定期限内に、商標局にその商標に対して異議申立を提出した。2007年8月8日、商標局は「(2007)商標異字第03273号裁定を下し、被異議申立商標の登録を許可した。

原告は当該裁定に不服し、商標審判委員会に異議不服審判を提出した。同時に、商標審判委員会に以下の資料を提出した。原告のウェブにおける関連資料のプリントアウト件;原告は「中国工商報」、「中国消費社報」、「経済参考報」、「中国品質報」、「中国知識産権報」、「中国機電日報」、「中国自動車報」、「自動車週報」、「広東工商報」、「南方都市報」及び「裁判所」などの新聞に記載したその製品及び商標の広告及び声明の写し; 2000年全国重点商標目録の写し(中には、自動車及びその部品を指定していた「本田Honda」商標を収録した);商標局2006年10月12日に下した商標馳字[2006]第139号回答の写し(中には、自動車、オートバイ製品を指定した「本田」商標を著名商標として認定した);「車時代週刊」などの新聞雑誌に掲載した「HONDA」に関わる報道などの証拠。

2009年11月23日、商標審判委員会は第31840号審決を下した。原告の本田技研工業株式会社より提出した異議不服審判請求理由は成立できず、被異議申立商標の登録を認めた。

原告は当該異議申立不服審判審決に不服とし、北京市第一中等裁判所に行政訴訟を提起した。主の訴訟理由は以下のとおりである。

(1) すでに効力を生じた判決によれば、第三者は別途先取りした「HONTO」商標が原告の「HONDA」商標とは類似商標を構成する。同じ判断基準によれば、本件被異議申立商標「HONYO」と引用商標「HONDA」も類似商標だと認定すべきである。

(2) 引用商標は比較的に高い著名度と顕著性を有し、被異議申立商標と比較する際、適宜に類似判断の基準を緩和すべきである。

(3) 第三者は明らかに原告の商業信用及びその著名ブランドをただ乗りし、不正利益を取得しようとする悪意を有し、且つ一連の悪意のただ乗り行為を実施した。

2010年7月30日、北京市第一中等裁判所は(2010)一中知行初字第1551号行政判決書を言い渡した。被告が下した商標字(2008)第31840号「第2012830号「HONYO」商標異議申立不服審判裁決」を取消し、被告は当該異議申立不服審判請求について改めて裁定を下すよう要求した。

.上記の争点に対する行政と司法の認定

1商標審判委員会の判断

本件において、商標審判委員会は以下のとおり判断した。被異議申立商標は文字「HONYO」からなり、第156865号商標は文字「HONDA」より構成された。両商標の最後のアルファベットの「YO」と「DA」は完全に異なるため、両商標の全体外観及び称呼上の区別は一層明らかである。引用商標は比較的に高い著名度のある商標であるため、関連消費者は引用商標のアルファベットの組み合わせを熟知している。よって、同時に両商標をつけた指定商品を購入する際、消費者は容易に両者の相違点を識別でき、誤認、混同を生じさせない。そのため、被異議申立商標と引用商標はオートバイなどの商品における使用は、商標法第28条にいう同一又は類似商品における類似商標を構成する状況に該当しない。原告より提出した異議申立不服審判請求理由が成立しない。「商標法」第33条、第34条の規定に基づき、商標審判委員会は、被異議申立商標の登録を許可するという審決を下した。

2一審裁判所の判断

商標が類似するか否かについて、商標標識の構成要素及びその全体の類似度、関連商標の顕著性と著名度、商標は使用した商品の関連度などを考慮すべきである。引用商標の顕著性と著名度が高ければ高いほど、関連消費者に誤認、混同を生じさせる可能性が高い。商標審判委員会の引用商標の著名度が高いため、誤認を生じさせないという判断は、明らかに間違った判断であり、それを是正すべきである。本件を結びつけて言えば、被異議申立商標「HONYO」は引用商標と比べて、共に無意味のアルファベットからなる商標であり、前の三文字は完全に同一で、外観において類似の部分がある。発音において、共に中国語の表音文字ではないため、英語の発音規則により類似の部分もある。また、引用商標は造語であり、且つ顕著性が比較的に高いである。特に、原告の商標審判段階において提出した数多くの証拠を以って、引用商標は被異議申立商標の出願日前に、既に比較的に高い著名度を有することを認定できる。よって、隔離観察の状態で、消費者は被異議申立商標と引用商標をシリーズ商標であることを誤認しやすい。商標審判委員会は、被異議申立商標と引用商標が類似商標を構成しないと認め、その上被異議申立商標の出願は「商標法」第28条に違反していないと認定したことは、事実認定ははっきりしていなく、法律適用も間違っているため、第31840号審決を取消すべきである。

.コメント

本件において、被異議申立商標「HONYO」と引用商標「HONDA」の商標自身は、その最後の二つのアルファベットの違いにより、商標全体の外観、や称呼などはある程度の区分できる。商標の著名度を考慮しない場合、当該二件商標はその指定商品において使用する場合、消費者に誤認、混同を生じさせないと思う。

しかし、 引証商標「HONDA」は中国では比較的に高い著名度を有し、且つその著名度は原告より提出した数多くの証拠により有力に証明されている。一審裁判所は、引用商標の著名度を十分に考慮し、被異議申立人の一貫した悪意を合わせて考慮したうえ、被異議申立商標の使用は、消費者の誤認を生じさせる可能性があると認め、本件商標の類似判断について、適宜に厳しい判断基準を適用した。本件を「商標法」第28条に適用し、被異議申立商標と引用商標は類似商標を構成すると判定し、商標審判委員会の異議申立不服審判の審決を取消した。
 
事件二:

.事件の紹介

1事件名:

商評字(2009)第15973号「第1676649号商標『UBINOBOSS班尼波士』に関る異議申立不服審判裁定」についての行政訴訟事件

2事件の争点

第1676649号商標『UBINOBOSS班尼波士』は第257001号引用商標一、第G550975号引用商標三、第G606620号引用商標四と類似商品における類似商標を構成するか否か

3事件の基本情報

一審事件番号:北京市第一中等裁判所(2009)一中知行初字第2586号行政判決書

原告:香港班奴国際有限公司

被告:中華人民共和国国家工商行政管理総局商標審判委員会

第三者:HUGO BOSS AG

判決の発行日:2010年8月31日

関る法律条文:「商標法」第28条

4事件の概要

被異議申立商標「UBINOBOSS班尼波士」の商標権者は香港班奴国際有限公司である。出願日は2000年7月17日で、出願番号は1676649号で、指定商品は第25類の被服、靴、ベルト(服飾用)、ネクタイ、帽子、靴下、皮革製被服、ダウンジャケット、下着である。

第257001号などの3件の引用商標は、商標権者がドイツのHUGO BOSS TRADEMARK MANAGEMENT GMBH&CO, KG(HUGO BOSS AGの前身)で、出願登録日はいずれも被異議申立商標より早い。指定商品は第25類に属し、被異議申立商標の指定商品とそれぞれ類似する。

被異議申立商標と3件引用商標の商標見本は次のとおりである。



2005年2月22日、商標局はHUGO BOSS AGが被異議申立商標に対する異議申立について裁定書を下し、HUGO BOSS AGは引用商標が高い著名度を有することと、被異議申立商標が引用商標を悪意で模倣したことを、十分に立証できなかったため、その異議申立理由は成立せず、被異議申立商標の登録を許可した。
 
HUGO BOSS AGは当該裁定書に不服し、2005年3月15日に商標審判委員会に異議申立不服審判を請求した。不服審判において、引用商標「BOSS」が商標局の2000年6月に編集した「全国重点商標保護名録」に収録された事実は、引用商標が被異議申立商標の出願前に高い著名度を有することを証明できると主張した。さらに、HUGO BOSS AGは商標局が1999年5月から2010年1月まで下した(1999)商標異字第3898号、第2617号、第2688号、(2000)商標異字第2467号商標異議裁定書を証拠として提出した。それらの裁定書において、商標局は商標「BOSS」がある程度の著名度を有することやある程度の影響力があることを認定した。HUGO BOSS AGは引用商標が法的保護を受けた事実に関る商標局の裁定書及び裁判所の判決書を計29部商標審判委員会に提出した。商標審判委員会はHUGO BOSS AGの不服審判請求を支持した。

原告香港班奴国際有限公司は当該異議不服審判審決に不服し、北京市第一中等裁判所に行政訴訟を提起し、次のとおり主張した。「被異議申立商標と引用商標は類似せず、称呼、外観、観念などにおいて明らかに異なっているため、類似商標に該当しない。それに、被異議申立商標は原告の長期にわたる使用を通して、すでに固定したシェアを占めていて、消費者に評価されている。上記の事実から見れば、被異議申立商標と引用商標は誤認混同を引き起こさない。」

2010年8月31日に、北京市第一中等裁判所は(2009)一中知行初字第2586号行政判決書を下し、被告が発行した商評字(2009)第15973号「第1676649号商標『UBINBOSS班尼波士』に関る異議申立不服審判裁定書」を維持した。
 
.上記の争点に対する行政と司法の認定 

1商標審判委員会の判断

本件において、商標審判委員会は以下のとおり認めた。被異議申立商標は3件の引用商標と比べると、引用商標「BOSS」を完全に含めていて、全体からは、引用商標と明らかに区別できるような観念を生じさせない。被異議申立商標の指定商品は、引用商標一、三、四の指定商品と同一又は類似商品に該当する。また、HUGO BOSS AGが提出した「全国重点商標保護名録」などの証拠は、商標「BOSS」が被服などの商品において高い著名度を有することを証明できる。被異議申立商標の登録及び使用は、消費者の誤認・混同を生じさせやすい。被異議申立商標は引用商標一、三、四と類似商品における類似商標を構成する。しかも、香港班奴国際有限公司が提出した証拠は、被異議申立商標がすでに著名商標になったことを証明できない。「商標法」第28条、第33条、第43条に従い、香港班奴国際有限公司の第1676649号商標「UBINOBOSS班尼波士」の登録を拒絶する。

2一審裁判所の判断

被異議申立商標と引用商標が類似するかどうかは、両商標のファイル履歴を考慮すると同時に、それぞれの著名度をも考慮すべきである。

引用商標一は「BOSS」で、被異議申立商標は「UBINOBOSS+班尼波士」である。両商標は外観が違うとはいえ、被異議申立商標が「BOSS」を完全に含めている。「BOSS」の観念は「上司、ボス」で、「UBINO」と「班尼波士」はいずれも意味を持たない造語で、称呼上、中国語の「班尼波士」と呼ばれる。そうすれば、両者の称呼は区別できる。しかし、HUGO BOSS AGの商標「BOSS」の著名度に関して、当該商標は2000年6月に商標局に「全国重点商標保護名録」に収録されている。商標局の裁定書から見れば、HUGO BOSS AGはその「BOSS」ブランドの樹立と権利保護を絶えずに継続している。商標審判委員会がそれに基づき引用商標が高い著名度を有することを認定した事実は成立できる。その上、被異議申立商標と引用商標一と類似すると判断してもよい。

被異議申立商標と引用商標三、四と比べると、引用商標三、四は「BOSS+HUGOBOSS」からなる。その要部は「BOSS」であるが、「HUGOBOSS」の部分ははっきりと識別できる。被異議申立商標は「「班尼波士」を含めている。引用商標はそれを含めていないが、いずれも意味のある「BOSS」を有する。商標のその他の要素は共に格別な意味を有しない。商標「BOSS」の著名度を考慮したうえ、被異議申立商標は「BOSS」の存在によって、消費者に当該部分に対して「班尼波士」より多くの注意を払わせやすい。HUGO BOSS AGの引用商標と関連があると誤認を生じさせやすい。両商標は第25類の商品において使用された場合、消費者に両社の商品の出所について誤認を生じさせやすい。

纏めると、被異議申立商標は「商標法」第28条が定められた商標として登録できない状況に該当し、商標審判委員会が下した[2009]第15973号審決の事実認定が明らかであり、法律適用も正しい。
 
.コメント

裁判所では、商標の類否判断を下すとき、商標のファイルに記載した履歴の他に、標識自身の著名度をも考慮しなければならないとされている。本件において、被異議申立商標と3件の引用商標とは、全体の外観において明らかな相違がある。特に、引用商標一に関して、判決に書いてあるとおり、「両者の外観は違い、称呼が区別できる」。しかし、引用商標の高い著名度に鑑み、被異議申立商標と引用商標が類似すると判断した。

それに対して、原告の香港班奴国際有限公司は、被異議申立商標の登録出願前に、すでにそれを大量に使用したことを証明できなかった。被異議申立商標の著名度に関る証拠は立証の事実に関る関連性が欠如している。よって、被異議申立商標は「まだ大量に使用されていない商標」であると言える。この状況の下、裁判所はビジネス標識により生じうる混同性を避けるために、類否判断の基準を厳しく把握し、被異議申立商標と引用商標が類似すると判断し、商標審判委員会の審決を維持した。
 
商品の類似に関する具体的な行政訴訟事件の紹介及び分析

事件一

.案件状況の紹介

1事件名:

商評字〔2010〕第00132号「第3008921号『HinQ及び図形』商標に関する異議申立不服審判裁定」に関わる行政訴訟事件

2事件の争点:

被異議申立商標と引証商標は同一又は類似商品における類似商標を構成するか否か

3事件の基本状況

一審案件番号:北京市第一中等裁判所(2010)一中知行初字第2373号

原告:日野自動車株式会社

被告:国家工商行政管理総局商標審判委員会

第三人:北京日産嘉禾潤滑油有限公司

判決日:2010年9月17日

関連法律条文:「商標法」第28条

4事件の概要

第3008921号被異議申立商標は第三人が2001年11月1日に商標局に出願したものであり、その指定商品は第4類の潤滑油、潤滑脂、切削液、潤滑剤、工業用油等である。

第1165024号引証商標1は原告が1997年3月6日に商標局に出願したものである。当該商標は1998年4月7日に登録が許可され、その存続期間は2008年4月7日から2018年4月6日までであり、その指定商品は第12類のトラック、バス、トラックの部品、バスの部品、陸上車両用エンジンである。

第146590号引証商標2は原告が1979年3月27日に商標局に出願したものである。当該商標は1981年5月15日に登録が許可され、その存続期間は2001年5月15日から2011年5月14日までであり、その指定商品は第12類のトラック、客車、トラックと客車用エンジン、トラックと客車の部品である。

第1167285号引証商標3は原告が1997年3月6日に商標局に出願したものである。当該商標は1998年4月14日に登録が許可され、その存続期間は2008年4月14日から2018年4月13日までであり、その指定商品は第7類のエンジン(陸上車両用のものを除く。)である。

第335463号引証商標4は原告が1988年3月22日に商標局に出願したものである。当該商標は1989年1月10日に登録が許可され、その存続期間は2009年1月10日から2019年1月9日までであり、その指定商品は第7類の通用発動機(船舶用発動機を含める)である。

上記商標の見本は以下のとおりである。



2007年12月18日に,原告は商標局の(2007)商標異字第06585号異議裁定に不服とし、被告に不服審判を請求した。その主要な事実と理由は以下のとおりである。1、日野社は、HINO商標の真正の所有者で、HINOは日野社の商号でもあり、日野社が中国で長年に亘って使用してきた著名商標でもある。2、被異議申立商標の指定商品と引証商標の指定商品は、類似商品を構成する。両商標は類似商品における類似商標を構成する。3、日産嘉禾公司は大型の自動車用潤滑油を専門的に生産した公司として、自動車業界で非常に有名であるHINO商標を知らないはずがなく、類似の被異議申立商標を出願した。その行為は、日野社の著名度を借りてただ乗りをし、不正利益を図るためである。

2010年1月11日に、被告は第00132号審決を下した。原告はそれに不服とし、裁判所に行政訴訟を提起した。

原告は開廷審理において、4件の引証商標が著名度を有する前提の下で、被異議申立商標と4件の引証商標とは類似するという訴訟理由のみを堅持し、その他の訴訟理由を放棄すると明確に表明した。
 
.上記争点に関する行政と司法認定

1商標審判委員会の判断

本件の争点を以下3つに纏めることができる。1、被異議申立商標と日野社が先に登録した4件の引証商標とは、同一又は類似する商品における類似商標を構成するか否か。2、引証商標1、引証商標2は著名商標であるか否か、被異議申立商標の登録は「商標法」第13条の規定に違反するか否か。

3、被異議申立商標の登録は日野社の先行商号権を侵害し、「商標法」第31条の規定に違反するか否か。

争点1について、被異議申立商標の指定商品の潤滑油、潤滑脂等の商品と、請求人の4件の引証商標の指定商品とは、機能、用途、販売ルート、販売対象等の方面において差異があり、同一又は類似商品に属しない。被異議申立商標は同一のデザイン方法とアルファベットの構成を採用して、前記引証商標と非類似の商品において共存しても、消費者に商品の出所を誤認させないため、両者は同一又は類似商品における類似商標を構成しない。

争点2について、「商標法」第14条に規定した著名商標を認定する時に考慮すべき要素に従って、現有証拠をもって、日野社の引証商標1、2は被異議申立商標の出願前に既に著名商標となったことを認定することができない。被異議申立商標の登録は関連公衆に混同及び誤認を生じさせなく、かつ日野社の合法的利益を損害しない。よって、被異議申立商標は引証商標を悪意により複製、模倣したものであるという日野社の主張は成立できない。

争点3について、日野社が提出した証拠は、被異議申立商標の出願前に、その屋号は潤滑油、工業用油等の業界で使用され、且つ上記業界で一定の著名度を有したことを証明できない。纏めると、現有証拠をもって、被異議申立商標の登録は消費者に商品の出所を混同させ、更に日野社の利益に損害をもたらすことを認定できない。被異議申立商標はその先行商号権を侵害したという日野社の主張を支持しない。

纏めると、日野社の審判請求理由は成立できない。「商標法」第33条、第34条の規定により、被異議申立商標の登録を許可する。

2一審裁判所の判断

類似商標とは、商標の文字の字形、称呼、概念又は図形の外観が類似し、或いは文字と図形の結合は配列、組み合わせ、外観が類似し、同一又は類似商品に使用した場合、関連公衆に商品の出所を混同させやすいことを指す。本件において、まず、被異議申立商標と4件の引証商標とは4つの同じアルファベットからなり、配列の順序も同一である。アルファベットの字体と変形のみがささやかな相違がある。よって、両標識は構図要素と全体的外観等の方面において非常に類似し、類似商標を構成する。

次に、被異議申立商標の指定商品と4件の引証商標の指定商品とは類似するか否かについて、当裁判所は以下のように認定する。中華人民共和国最高裁判所「商標民事紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈」第11条の規定により、類似商品とは、機能、用途、生産部門、販売ルート、消費対象等の面において同じであり、または関連公衆がそれに特定の関係があると一般的に認識し、容易に混同を生じる商品をいう。商品と役務の類似とは、商品と役務との間に特定の関係があり、関係公衆を容易に混同させるものをいう。第12条の規定により、裁判所が商品または役務が類似であるか否かを認定する場合は、関係公衆の商品または役務に対する一般的な認識を以って総合的に判断しなければならない。「商標登録用商品および役務の国際分類表」、「類似商品および役務区分表」を、商品または役務が類似であるかを判断する上での参考とすることができる。本件において、被異議申立商標の指定商品は第4類の潤滑油等の商品で、引証商標1と引証商標2の指定商品は第12類のトラック、バス等で、引証商標3と引証商標4の指定商品は第7類のエンジン(陸上車両用のものを除く。)と通用発動機等である。関連消費者の一般的認識からみれば、潤滑油等の商品とトラック、バス及び発動機等の商品とは、機能、用途等の方面において密接な関係がある。潤滑油は車両と発動機の保守に重要な役割を果たす。潤滑油の粘度、レベル及び純度は、車両の発動機と伝動装置等の部品の正常な回転に非常に重要な影響を与える。潤滑油は発動機を有効に潤滑し、摩損と故障を低減させ、使用寿命を延ばすことができる。潤滑油を欠けると、車両と発動機は正常の使用ができない。しかも、両者は販売ルートと販売対象においては重なっている。よって、潤滑油等の商品とトラック、バス等の商品とは類似商品を構成する。
纏めると、被異議申立商標と4件の引証商標は同一又は類似商品において使用されると、関連公衆に商品の出所を混同させやすいため、類似商標を構成する。原告の訴訟請求は事実と法律根拠があるため、当裁判所はそれを支持する。第00132号裁定は事実認定が間違っているため、当裁判所は法によりその裁定を取り消す。
 
.コメント

本件において、被異議申立商標と4件の引証商標とは4つの同じアルファベットからなり、配列の順序も同一であり、アルファベットの字体と変形のみがささやかな相違があるため、商標自体からみれば、非常に類似する。

被異議申立商標の指定商品は第4類に属し、引証商標の指定商品は第12類に属する。「類似商品及び役務区分表」によれば、両者は類似商品と判定されない。裁判所は本件判決において、日野社の先行商標の著名度について明確に認定しなかったが、「両者は販売ルートと販売対象においては重なっている」を理由とし、「潤滑油」と「トラック、発動機」は類似商品であると判断した。商品の販売ルート、販売対象は大きな関連性があることや、先行商標の著名度と顕著性や、被異議申立商標は引証商標と比べれば、まだ使用に大量投入されていない商標に属すること等を考慮したに違いない。商標字体が非常に類似する状況の下、消費者の混同及び誤認をなくすために、商品の類似判断基準を厳しく把握したのは、「意見」の指導精神を反映している。
 
事件二

.事件状況の紹介

1事件名:

商評字〔2009〕第36484号「第3377767号『M3』商標に関する不正登録取消審判審決」に関わる行政訴訟事件

2争点:

係争商標と引証商標は同一又は類似商品における類似商標を構成するか否か

3事件の基本状況

一審案件番号:北京市第一中等裁判所(2010)一中知行初字第933号

原告:深圳市紫麓供応チェン管理服務有限公司

被告:国家工商行政管理総局商標審判委員会

第三人:3M公司

判決日:2010年8月20日

関連法律条文:「商標法」第28条

4事件の概要

第3377767号係争商標「M3」は、深圳市紫麓信息技術有限公司が2002年11月21日に出願したものである。当該商標は2004年2月7日登録が許可され、その存続期間は2014年2月6日までである。その指定商品はCD-ROM(読み取り用記憶媒体)、光ディスク、コンピュータソフトウェア(記録済み)等で、0901、0906、0908類似群に属す。2009年4月15日に、深圳市紫麓信息技術有限公司は深圳市紫麓供応チェン管理服務有限公司に変名した。

3件の引証商標は皆第三人の3M公司に所有するものである。中には、

第138324号引証商標1「3M」は、1980年7月5日に登録が許可され、更新を経て、その存続期間は2010年7月4日までである。その指定商品はビデオテープ、ビデオディスク、音響・映像用コンパクトディスク等で、0901、0908~0909類似群に属する。

第283503号引証商標2「3M」は、1986年6月7日に出願されたものである。その登録が許可された後、更新を経て、存続期間は2017年4月19日までである。その指定商品はデータ処理設備等で、0901、0907~0911類似群に属する。

第727253号引証商標3「3M」は、1993年7月30日に出願されたものである。その登録が許可された後、更新を経て、存続期間は2015年1月27日までである。その指定商品は赤外線インジケーターランプ(器械用)等で、0901、0903~0904、0907~0908、0910、0913、0916、0919、0921、0924類似群に属す。3件の引証商標は皆明尼蘇達採鉱及製造公司が出願したものであるが、3M公司に譲渡されたものである。

上記商標の見本は以下のとおりである。



2006年1月23日に,3M公司は商標審判委員会に係争商標登録を取り消すことを請求した。その理由は以下のとおりである。係争商標と3件の引証商標は類似商品における類似商標を構成する。係争商標は3M公司の商標を悪意により模倣したものであり、不正手段で先取りした登録に属す。3M公司の引証商標は著名商標と認定されるべきである。商標法第13条、第31条、第41条及び商標法実施条例第29条の規定により、係争商標登録を取り消すことを請求する。また、3M公司は1999年と2000年版「全国重点商標保護名録」の複写を商標審判委員会に提出した。当該名録には、電子製品に登録した「3M」商標が収録されている。1996年と2001年、商標審判委員会が下した商標異議審判審決と商標取消審判審決において、「3M」商標は関連公衆に熟知されている商標であると認定された。

商標審判委員会は2010年1月4日に第36484号審決を下した。紫麓公司は第36484号審決を不服とし、法定期間内に裁判所に行政訴訟を提起した。

開廷審理において、紫麓公司は以下事実を認めた。「ネオンサイン、電子公告板」以外の係争商標の指定商品は、3件の引証商標の指定商品と同一又は類似商品を構成する。不正登録取消段階で3M公司から提出した材料を受け取ったが、その材料の真実性について意見を発表しなかった。3M」商標は電子商品においてある程度の著名度を有する。

.上記争点に関する行政と司法認定

1商標審判委員会の判断

係争商標の指定商品の「磁気ディスク、光ディスク、電子公告板」等の商品は、それぞれ引証商標1の指定商品の「録画テープ」等の商品、引証商標2の指定商品の「データ処理設備」等の商品、引証商標3の指定商品の「赤外線インジケーターランプ(器械用)、磁気テープ」等の商品とは同一又は類似商品に構成する。係争商標と引証商標1、2、3とは、前後順序のみが異なり、それに、3M公司の「3M」商標は「電子製品、磁気ディスク」の商品においてある程度の著名度を有する。よって、係争商標と引証商標1、2、3は同時に同一又は類似商品において使用された場合には、混同及び誤認を生じさせやすい。よって、係争商標と引証商標1、2、3は同一又は類似商品における類似商標を構成する。本件では先行商標「3M」を著名商標と認定するという3M公司の請求については、本件において先行商標に対して拡大保護を与える必要がないことに鑑み、先行登録商標が著名商標になったか否かを認定する必要がない。「商標法」第28条、第41条3項、第43条及び「商標法実施条例」第29条の規定により、被告の商標審判委員会は係争商標登録を取り消すという審決を下した。

2一審裁判所の判断

係争商標の指定商品の「ネオンサイン、電子公告板」と引証商標3の指定商品の「赤外線インジケーターランプ(器械用)」を比較すれば、その主要原料、生産部門、販売ルート等の方面において同一又は類似するため、類似商品と判断されるべきである。係争商標「M3」と3件の引証商標「3M」を比較すれば、配列順序が異なり、且つ字体がささやかな相違があることに過ぎないため、両者は顕著な区別がない。更に、36484号審決における「3M」商標がある程度の著名度を有するという認定について、紫麓公司は認めている。よって、係争商標と3件の引証商標の共存は、関連消費者の混同と誤認を生じさせやすい。係争商標と3件の引証商標は同一又は類似商品における類似商標を構成するという商標審判委員会認定は、結論としては正確であるため、当裁判所はそれを維持する。
 
.コメント

「類似商品及び役務区分表」によれば、本件係争商標の指定商品は第9類の0901、0906、0908類似群に属す。その中に、「ネオンサイン、電子公告板」は0906類似群に属し、3件の引証商標の指定商品の所属類似群とは異なっているため、「類似商品及び役務区分表」によれば、同一又は類似商品に属しない。しかし、現有証拠と開廷審理の過程によれば、引証商標は中国である程度の著名度を有することを認定できる。また、係争商標の登録者は本件において係争商標の関連使用証拠を提出しなかった。よって、係争商標はまだ使用に大量投入されていない商標に属すと認定できる。消費者と同業者の利益を十分に考慮したうえで、権利付与・権利確定の基準を厳しく把握し、「ネオンサイン、電子公告板」 と引証商標の指定商品とは類似すると判断した。
 
纏め

上記の事例からみれば、商標審判委員会と一審裁判所が商標の類否を判断するとき、先行引例商標の著名度と使用状況、係争商標の使用状況は非常に重要な考慮要素である。

著名度が高くて顕著性が強い商標の創作及び使用は、その創作者の智恵と心血が凝集したものである。商標の所有者は、商標をビジネス使用に投入し、著名度のない商標から著名度を有する商標に、更に著名度の高い商標に育て上げるまでには、大量の人力、物力及び時間を要するものである。

他人が著名商標と同一又は類似する商標を偶然に設計し、且つ採用するのはありえない。従って、著名商標にはもっと広い保護を与え、著名商標との類否を判断する基準をもっと厳しく把握する。その判断基準の採用は、いかなる混同及び誤認を有効的に回避できる。

まだ使用されていない係争商標について、商標出願人や商標権者は商品又は役務の出所を表示するという本当の意味上の商標権を取得していないと言える。商標の権利付与・権利確定の基準を適当に厳しく把握すれば、消費者と同業者の利益を十分に保護することができるだけではなく、係争商標がビジネス使用に投入されて著名に至った後、消費者に区別させるために企業がより多くのコストで宣伝するほかないとのことを回避することもできる。上記の案件からみれば、実際には、まだ大量に使用に投入されていない商標と、著名で顕著性の強い先行商標との類否判断をするとき、裁判所は適宜に判断基準を厳しく把握している。ここに留意すべきなのは、具体的な案件を審理するとき、具体的な案件の状況とそれ相応な法律規定に従って審理、判断を行うべきことである。法律要件が明確で、基準適用の限界がはっきりとした場合には、厳格に法律要件と基準限界に従って処理すべきであり、随意に商品又は商標の類似基準を拡大してはならない。法により商標の権利付与・権利確定の基準を適宜に厳しく把握しなければ、先行の商業標識を所有する企業にとっては明らかに公平でない場合であってはじめて、政策的方向と価値のオリエンテーションを実現するために、裁判所は上記の政策的動向に従って裁量の範囲内で司法積極主義をもって取り扱うことができる。
 
(2010)

ホットリンク:北京魏啓学法律事務所
©2008-2025 By Linda Liu & Partners, All Rights Reserved.
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