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使用済製品再生業界における見過ごせない商標権侵害問題


中国弁護士 劉 海生
 
急速な社会経済の発展に伴い、多くの製品、特に電子製品の更新やモデルチェンジがますます加速している。こんな状況によって、中古品の回収、再生、及び再販売という巨大な市場が生み出され、新たな産業チェーンとして形成されている。本稿は、現行法の枠組みの下、司法実務における典型事例に基づいて、筆者自身の類似案件に関する実務経験も踏まえながら、刑事摘発の観点を優先し、使用済製品の再生において引き続き原商標を使用して販売することに関わる商標権侵害問題について簡単に分析・討論を行いたいと思う。

一、使用済製品再生の基本概念について

使用済製品の再生による商標権侵害は、商標権紛争分野においても比較的複雑な問題である。現行の法律では、使用済製品の再生について明確な概念定義はないが、深セン市検察院が2022年に公表した「深セン市検察院電子製品の再生業界に関する知識産権刑事コンプライアンス・ガイドライン(試行用)」(以下「コンプライアンス・ガイドライン」という)では、「再生は、消費者の使用により、性能・状態に一定の消耗が生じた正規品の電子製品について、その性能・状態を改善・回復させるために行う研磨、修理、部品・部材の交換等の一連の加工過程を指す。」と定義した。実務上、使用済製品再生案件に関わる使用済製品は電子製品に限らず、再生の方法も研磨、修理、部品交換に限らないが、上記の定義及び当該「コンプライアンス・ガイドライン」の関連規定は、重要な参考として、商標権者、法執行機関及び司法機関が使用済製品の再生行為を理解する際に生かすことができる。また、当該コンプライアンス・ガイドラインは、使用済製品再生業界の従事者が関連業務を展開する中で、刑事コンプライアンスを構築し、刑事責任を負うリスクを回避するための参考にすることもできる。

二、使用済製品の再生に商標権の消尽原則が適用されるか否か

いわゆる商標権の消尽原則は、商標権の枯渇原則とも呼ばれ、登録商標付きの商品が商標権者の同意を得て市場に投入された後、当該商品に対して、商標権者の権利は消尽し、購入者が当該商品を使用又は再販売することに干渉してはいけないことを指す。この場合、購入者の行為は商標権侵害行為に該当しない。使用済製品再生の分野で言うと、修復の標示が目立つ位置に表示されず、又は販売商品が使用済製品の再生品であることを消費者に明確に告知していない限り、商標権消尽の原則は適用されないというのが中国の司法実務における主流の見解である。上記観点では、主に次の二つの面の考慮が反映されている。すなわち、一、商品が組立、再生、再包装を経て、再び流通市場に入った場合、消費者はもはや商標を通じて、商品自体の品質に合致する自分の欲しがる商品を購入することができなくなったので、商標の品質保証と営業権評価の機能に損害が発生する。二、実践中、元の商標をタダノリして多発な犯罪現象となっているのは、やはり使用済製品の再生行為がメインである。このような行為が野放しにされれば、商標権者の私権を損なうだけでなく、商標を通じて確立された知的財産権の管理秩序をも損なうことになる。

三、使用済製品の再生は、国が奨励する再製造行為に該当するかどうか

「循環経済促進法」第2条の規定に依れば、本法にいう再利用とは、廃物を直接製品とするか又は修復、再生及び再製造後において引き続き製品として使用するか、又は廃物の全てもしくは一部をその他の製品の部品として使用することを指す。同法は、使用済製品の再生が合法行為であることを明確にした上で、再生、及び販売行為を再度制限しており、例えば、第40条には、国は、企業によるモーター・ビークル部品、工事機械及び旋盤などの製品の再生産及びタイヤ再生を支持する。販売する再製製品及び再生製品の品質は、国の規定する基準に合致しなければならず、なおかつ目立つ位置に再製製品又は再生製品と標示しなければならないと明記した。第56条、第57条には、「再製造」、「再使用」、「再生」と標示されなかった製品の販売は、罰金、営業許可証取消等行政処分の対象となり、犯罪を構成する場合には、法により刑事責任を追及すると明記した。

また、2021年に国家発展改革委員会など8つの部門が共同で公布した「自動車部品の再製造規範管理暫定弁法」を参照すると、「本弁法にいう再製造は、機能的損傷または技術的陳腐化の原因で使用されなくなった中古の自動車部品を専門的に修理または改造し、その品質特性、安全性および環境性能をプロトタイプの新製品に劣らないものにするプロセスを指す。」、「再製造製品は、再製造企業の商標と「再製造製品」の表記を目立つ位置に標示し、恒久的に維持しなければならない。」と明確に規定されている。また、再製造企業に対しても同時に様々な規範条件が定められている。

従って、使用済製品の再生は必ずしも国が奨励する再製造行為に該当するわけではなく、実務においては、やはりそれぞれの事案の状況に応じて判断する必要がある。

四、使用済製品の再生における商標権侵害の判断要素

商標法の規定及び司法実務によると、「混同を生ずるおそれ」は商標権侵害の有無を判断する中心的な基準である。「混同を生ずるおそれ」とは、商標権者の許諾を得ずに、登録商標と同一又は類似の標識を同一又は類似の商品又は役務に使用することにより、当該商品又は役務の消費者グループが、たとえ消費者が慎重かつ合理的な注意義務を払ったとしても、それが同一の出所であると誤認し、又は両者の生産者又は役務提供者がライセンス、提携、スポンサーシップのその他の関連関係を有すると誤認するおそれがあることをいう。実務上、使用済製品の再生に関する商標権侵害の判例を検索・研究した結果、通常、次のような側面から商標権侵害の判断を行うことができる。

1、客観的に実質的な変更を有する再生行為を実施した。

現行の法律法規及び司法実務において、どのような状況において、どの程度の再生が実質的な変更に該当するかについて、明確な規定及び統一的な基準はないが、いくつかの典型的な事例を見れば分かるように、重要な部品・コンポーネントの交換又は改造、外観上の明らかな変更、及び模倣部品を使用した再生行為等に関わった場合、製品に実質的な変更を行ったと判断し、商標権侵害に該当すると認定される可能性が高い。

例えば、2021年4月に深セン市龍崗区人民検察院が公訴を提起した「李某平等による登録商標詐称事件」において、公安当局は現場で180台のIPADタブレットを押収したが、アップル社の鑑別によれば、それらのうち、67台はスクリーン、システムメモリ、バックボタン、シェル等の変更が行われ、「修理」という形で再生されたものである。これら再生品には、商品の出所を消費者に誤認させないための有効な措置が取られていない。したがって、検察機関は当該の一部の製品はアップル社の登録商標詐称商品と認定した。一方、残りの113台は、主に軽い拭き取り、研磨などの方法により再生されたものであり、電子製品に「実質的な変更」が加えられていなかったため、商標権消尽の原則を適用することができ、アップル社の登録商標を模倣した商品とみなされるべきではない。

2、主観的に再生行為を実施し、消費者の混同や誤認により、他人の商標に付された営業権を利用して不当な利益を得るという目的を達成することを意図する。

中国自動車ハブ再生第一案件とされる「尚咚咚等による粗悪模造品生産・販売事件」において、裁判所は主に以下の理由に基づいて、被告人の行為が登録商標詐称罪を構成すると認定した。すなわち、再生ハブは出所、製造技術においていずれも正規品と実質的に異なり、被告人の再生、組み合わせ、組み立てにより、既に元の商品でなくなったため、「同一の商品」ではなく、「同種の商品」と認定されるべきである。それに、被告人は規定に従って目立つ位置に再生品の表示をしていない。被告人は、商品の出所を混同するために意図的に元の標識を保留し、購入したハブが正規品メーカーからの新品であると消費者を誤認させて、商品使用した後に正規品メーカーの品質に疑念を生じさせたので、商標権者の評判を損なう行為に該当する。

五、まとめ

実務上、積極的に商標ラベルを購入したり商標マークを印刷したりして商品に同一の商標を使用することも、消極的に商品から商標を除去することも、本論文で検討したような使用済製品の再生行為と同じく、いずれも商標の異なる使用方法の1つである。再生製品については、もしそれが元の製品と既に「同一の商品」に該当しなくなったとしても、仮に表示の不正確によって修復又は再生された商品が新品と認識されたら、依然として商標権侵害行為に該当する。従って、再生業界の従業者に相応の法的責任が課されている。特に、再生製品を大量に生産加工し、目立つ位置に修復又は再製造と標示せず、購入者に再生製品の実状況を明確に告知しない行為に対しては、民事責任を追及するほか、刑事責任を追及する必要もある。
 


ホットリンク:北京魏啓学法律事務所
©2008-2025 By Linda Liu & Partners, All Rights Reserved.
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