知的財産法廷の若干の問題に関する最高裁判所の規定
法釈〔2018〕22号
(2018年12月3日採択、2019年1月1日から施行)
知的財産事件の裁判基準をさらに統一し、各市場主体の適法な権益を法により平等に保護し、知的財産への司法保護の強さを高め、技術革新の法治環境を最適化し、「革新により発展を駆動する」戦略の実施を促進するため、「中華人民共和国裁判所組織法」「中華人民共和国民事訴訟法」「中華人民共和国行政訴訟法」「特許等の知的財産事件の訴訟手続きにおける若干の問題に関する全国人民代表大会常務委員会の決定」等の法律規定に基づき、裁判活動の実際を考慮しつつ、最高裁判所の知的財産法廷に関する問題について以下のとおり定める。
第1条 最高裁判所は、特許等の、強い技術専門性を有する知的財産に係る上訴事件を主として審理する知的財産法廷を設立する。
知的財産法廷は、最高裁判所傘下の常設裁判機関として、北京市に置かれる。
知的財産法廷による判決、裁定、調停書及び決定は、最高裁判所の判決、裁定、調停書及び決定となる。
第2条 知的財産法廷は以下の事件を審理する。
(1)高等裁判所、知的財産裁判所、中等裁判所による発明特許、実用新案特許、植物新品種、集積回路の回路配置、ノウハウ、コンピュータ・ソフトウェア、独占の第一審民事事件の判決、裁定を不服として上訴した事件。
(2)北京知的財産裁判所による発明特許、実用新案特許、意匠特許、植物新品種、集積回路の回路配置の権利化・有効性確認に関する第一審行政事件の判決、裁定を不服として上訴した事件。
(3)高等裁判所、知的財産裁判所、中等裁判所による発明特許、実用新案特許、意匠特許、植物新品種、集積回路の回路配置、ノウハウ、コンピュータ・ソフトウェア、独占の行政処罰等に関する第一審行政事件の判決、裁定を不服として上訴した事件。
(4)全国の重大・複雑な本条第(1)、(2)、(3)号に掲げる第一審民事及び行政事件。
(5)本条第(1)、(2)、(3)号に掲げる第一審事件の既に法的効力が発生した判決、裁定、調停書に対し、法律に照らして上告、再審請求、上告等を行い、裁判監督手続きが適用される事件。
(6)本条第(1)、(2)、(3)号に掲げる第一審事件の管轄権異議、罰金、拘禁の決定に係る異議申立、裁判期間延長請求等の事件;
(7)最高裁判所が知的財産法廷により審理されるべきと判断したその他の事件。
第3条 本規定第二条第(1)、(2)、(3)号に掲げる第一審事件の担当裁判所は、規定に従って知的財産法廷に紙及び電子のファイルを適時に移送しなければならない。
第4条 知的財産法廷は当事者の同意を得て、電子訴訟プラットフォーム、中国裁判経過情報公開サイト及びファックス、電子メール等の電子的手段により、訴訟書類、証拠資料及び裁判文書等を送付することができる。
第5条 知的財産法廷は、電子訴訟プラットフォーム又はオンラインビデオ等の手段により、証拠交換、開廷審理前の会議等を行うことができる。
第6条 知的財産法廷は、事件の状況に応じて、現地又は原審裁判所の所在地に臨んで事件の巡回審理を行うことができる。
第7条 知的財産法廷が保全等の措置を講じる場合、執行手続きに関する規定に基づいて実施する。
第8条 知的財産法廷が審理する事件の立件情報、合議体の構成、裁判の流れ、裁判文書等は法律に照らして、当事者及び社会に公開するとともに、電子訴訟プラットフォーム、中国裁判経過情報公開サイトにより調査できるようにする。
第9条 知的財産法廷の裁判官会議は、法廷長、副法廷長及び若干のシニアな裁判官により構成され、重大・困難・複雑な事件等を検討する。
第10条 知的財産法廷は、かかる事件の裁判活動に対する調査研究を強化し、裁判基準及び審理法則を適時に整理し、下級の裁判所の裁判活動を指導しなければならない。
第11条 知的財産裁判所、中等裁判所による、既に法的効力が発生した本規定第二条第(1)、(2)、(3)号に掲げる第一審事件の判決、裁定、調停書に対して、省クラスの検察庁が高等裁判所に再審を請求するとき、高等裁判所は、最高検察庁により法に照らして最高裁判所に請求され、知的財産法廷により審理される旨を伝えなければならない。
第12条 本規定第二条第(1)、(2)、(3)号に掲げる第一審事件の判決、裁定又は決定が2019年1月1日より前に出されたものであり、当事者が法に照らして上訴又は異議申立を行った場合、原審裁判所より一級上の裁判所により審理される。
第13条 本規定第二条第(1)、(2)、(3)号に掲げる第一審事件の既に法的効力が発生した判決、裁定、調停書が2019年1月1日より前に出されたものであり、法に照らして上告、再審請求、上告が行われた場合、「中華人民共和国民事訴訟法」「中華人民共和国行政訴訟法」の関係規定が適用される。
第14条 本規定の施行前に許可を得て特許、ノウハウ、コンピュータ・ソフトウェア、独占の第一審民事及び行政事件を受理できる基層裁判所は今後、上述した事件を受理しない。
基層裁判所が2019年1月1日までに結審していない前項に掲げる事件について、当事者がその判決、裁定を不服として法に照らして上訴した場合、その一級上の裁判所により審理される。
第15条 本規定は2019年1月1日より施行される。最高裁判所がこれまで発表した司法解釈と本規定の間に不一致がある場合、本規定に準ずる。